四字熟語でコロナ後を考える8「紆余曲説」

新型コロナウイルス感染症の拡大で絶対に優先させなければならないこととして、何をさて置いても頑張ってきたのは“医療崩壊”を防ぐことでした。医療崩壊というのは緊急に医療を受けなければならない状況に陥ったときに救急車を呼んでもダメ、救急車が駆けつけても受け入れてくれる病院がない、病院に運ばれたとしても的確な治療が受けられないという状況を指しています。
入院を断って、自宅療養を強いられても、医療崩壊を防ぐためだからといって我慢をしてきたのは、長年をかけて構築してきた安全安心の医療システムを守るための協力の姿勢でした。医療システムは、誰も平等に医療を受けられる皆保険制度のことを一般に指して議論がされているところですが、医療が成り立っているのは医師が診断して、病名がつけられ、治療が行われるという一連のシステムが守られているからです。
どんなことがあっても、これだけは守られてきたのですが、感染拡大で、このシステムが崩れる危機的状況になっています。それは新型コロナウイルスに感染しているのか自分で検査をする、感染を医師に判断してもらうのではなくて自分で判断して自宅療養をするということで、このことを厚生労働省が打ち出したときは大きなショックを受けました。
実際に、どれくらいシステム変更の影響が出るのかについては、これからの感染拡大の状況にかかっていて、第6波は乗り越えたとしても、今後の感染拡大(新型コロナウイルス感染症以外の感染症も含めて)で状況は、もっと悪化することも考えられます。
今回の四文字は「紆余曲説」は「紆余曲折」という四字熟語をもじったもので、“紆余”というのは曲がりくねっていることを指しています。「紆余曲折」は遠回りで曲がりくねっていること、事情が込み入っていて解決に手間取ることを意味しています。これをわざわざ事実を曲げて説明する“曲説”に変えたのは、今の難局を乗り越えるために考えを変えて実行したことが医療システムの崩壊につながることがないように、今後の動向を見守っていくことを心に刻むために、あえて掲げることとしました。