脳の健康寿命49 糖尿病と認知症の関係

糖尿病になると認知症になりやすいというのは事実です。糖尿病は血管にダメージを与える病気で、血管の老化が進むために脳血管の血流が低下して、そのために脳を機能させるための酸素が充分に運ばれなくなります。脳細胞のエネルギー源になるのはブドウ糖で、これが脳細胞にあるエネルギー産生をする器官のミトコンドリアに取り込まれると、その中のTCA回路で酸素を用いてエネルギーが作り出されます。このエネルギーが脳細胞を働かせるのに使われているため、血流低下は認知症につながるとされていますが、この原因によって起こるのは脳血管性認知症です。
認知症で最も多いアルツハイマー病は、この血流低下が主な原因ではなくて、インスリンの分泌低下によるものだと考えられています。脳の中で記憶に直接関係する海馬は、特に多くのブドウ糖を必要とします。海馬は短期記憶から長期記憶につながる中期記憶を担っている器官で、この機能が低下すると長期記憶が衰えてくるようになります。
ブドウ糖が脳細胞に取り込まれるためには、膵臓から分泌されるインスリンが必要です。食事で糖質を摂って血液中のブドウ糖が多くなると、インスリンが多く分泌されます。常に血液中のブドウ糖が多い血糖値が高い状態になると、膵臓はインスリンを出し続け、限界が近づいてくると膵臓の機能が低下してインスリンの分泌量が急に低下します。これが糖尿病の始まりで、インスリンが不足すると脳細胞に取り込まれるブドウ糖が減って、その結果として海馬に使われるブドウ糖が減り、記憶に影響が出るようになるのです。
アルツハイマー病は、脳血管の血流が低下することで発症が早くなり、状態も悪化しやすいことが知られています。血流が低下すると脳細胞の近くまで運ばれるブドウ糖が減り、さらにインスリンによって取り込まれるブドウ糖が減るので、両方の理由によって認知症が進みやすくなるというわけです。