脳の健康寿命50 運動で脳にブドウ糖を多く届ける

脳の唯一のエネルギー源とされるのはブドウ糖です。血液中のブドウ糖が多くなりすぎた血糖値が高い状態が長く続くと、糖尿病が引き起こされるわけですが、血液中のブドウ糖が多いと脳に多くのブドウ糖が運ばれて、脳の機能が高まるのかというと、それとは逆のことが起こっています。逆というのは、血糖値が高いと脳に取り込まれるブドウ糖が少なくなってしまうことです。
脳細胞に限らず、全身の細胞は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用によってブドウ糖を取り込んでいます。インスリンは血糖値が高くなるほど多く分泌されるようになります。そうであれば、糖尿病の人は細胞にブドウ糖が多く取り込まれるのかというと、逆に少なくなっています。
膵臓は働き者であって、ブドウ糖が多くなるとインスリンを出し続けます。限界まで働くと疲弊してしまい、急にインスリンの分泌が低下します。そのためにブドウ糖を細胞に充分に取り込むことができなくなり、血糖値が下がらなくなるのが糖尿病です。
インスリンが不足したら、これを医薬品によって取り入れる方法はありますが、それ以外の方法としてすすめられるのが運動です。運動をすると、それだけエネルギー源のブドウ糖が必要になりますが、そのブドウ糖が充分に入ってこない場合にはAMPキナーゼという酵素が多く作られます。
ブドウ糖を細胞に取り込むときに働いているのはGLUT–4というグルコース輸送体で、インスリンの刺激によって細胞膜まで移動して、ブドウ糖を取り込みます。インスリンが不足しているときにAMPキナーゼが代わりに働くわけですが、この酵素は運動によってエネルギー不足の状態になると多く作られるようになります。特に多く作られるのは有酸素運動をしたときで、だから糖尿病の予防や改善には歩くことがすすめられるのです。
AMPキナーゼは脳の細胞にブドウ糖を効果的に取り込むためにも有効で、ウォーキングをすると認知症予防になるという研究成果が多く得られているのは、このAMPキナーゼの働きがあるからなのです。