脳の健康寿命52 ゲームは脳の健康寿命を延ばすのか

“ゲーム脳”という言葉があります。これはコンピュータゲームに依存する人の脳の状態を示していて、脳への刺激が継続することによって機能が発揮できなくなるということで、あまりよいイメージで使われることはありません。しかし、脳を刺激するのは認知症予防には大切なことで、よい意味でのゲーム脳について語られることが増えてきています。
ゲームはルールを覚え、これから起こることを予測して、予測と違ったことがあったときの反応も脳を刺激してくれます。認知症予防にテニスや卓球がよいとされるのも、身体の活動と同時に脳の機能向上が期待されているからです。
脳トレにはゲームがよいということで、高齢者を対象とした雑誌でも新たなゲームが次々に登場しています。また、カードゲームやボードゲームは高齢者施設でのサービスの定番となっています。これはゲームで脳を使うと同時に、コミュニケーションゲームであることから、認知機能で重視される部分も適度に刺激してくれます。
今どきは紙やボードだけでなく、パソコンやタブレットなどでも脳トレは盛んに行われていて、認知機能を維持するために使われている脳の前頭前野を刺激することができます。前頭前野は考える、記憶する、応用する、集中する、新たなことを創造する、感情をコントロールするといった機能があります。
コンピュータゲームと脳機能については、介護施設に入所する高齢者30人を対象に7日間、1日1時間以内でコンピュータゲームをしてもらったところ、19人の認知機能が向上して、9人は変化なしで、2人が低下したという結果が報告されています。低下した2人はゲームの時間が短かったということです。
では、ゲームの時間を長くすれば、さらに認知機能が高まるのかというと、そのような調査はされていません。ひょっとすると脳への刺激が悪影響を与えるかもしれないという試験は人道上、許されていないということもあります。
コンピュータゲームはスマホで使うことができることもあって、高齢者が熱中している姿も目にします。自分の脳の健康を保つためにしていることだから口出ししないでほしいという人もいるのですが、やりすぎはよくないことだけは知っておいてほしいのです。