四字熟語でコロナ後を考える21「勇名無実」

「有名無実」というのは、名前ばかりがあって実質が伴わないことを指す四字熟語です。あの人は立派である、とか、肩書きが凄いから人物も凄いと思われていても実は大したことがないということを示しています。肩書きが凄いと、その人も立派であると思い込むというのは肩書き社会ではありがちなことで、ついつい肩書きに騙されてしまうことにもなります。
肩書きジャンケンなるものがあって、別名は名刺ジャンケンともいうのですが、その方から受け取った名刺を使ってジャンケンをすることです。部長よりも社長のほうが偉いということではなくて、部長であっても会社の名声と実績によっては、社長よりも勝ちになることもあります。会社の肩書きではない、個人の名声で勝ち負けを競うことがあり、こちらは凄い人だと思って名刺を出したのに、もっと凄い名刺を出されて負けることもあります。
今回のテーマの「勇名無実」の「勇名」は勇者であることの名声で、肩書きよりも凄い人は勇名を馳せるということになります。「無実」は根拠になる事実がないことを指しています。勇名があっても、実際には社会では役に立たないこともあって、それが「勇名無実」ということにもなります。
コロナ禍で大きな被害を受けて、これまでなら有名人の名前を出して、その人がやってきたこと、語った名言を引き合いに出せば、周囲を驚かせることはありました。こちらは引き合いに出したことはないのですが、自分が凄いということを示すために有名なことを出し、その名言を使う人もいます。
しかし、名言の宝庫と呼ばれる出版社の書籍を、名言の主とともに文章化してきた立場からすると、よほどのことでもなければ驚くことはありません。なぜ、こんなことを書いたのかというと、コロナ禍で心身ともも大きなダメージを受けた人が、これまでなら感激させられた逸話で驚かなくなってきているので、引き合いになる言葉を、もっと精査したほうがよいのではないか、という場面に繰り返し出会ってきているからです。