四つの茶筒の使い分け

4歳のときのことなので、半世紀の50年よりも前の63年も前の話ですが、すべての人に同じように対応するのではなくて、対応する人によって差をつけることがあるのを知りました。それを知ったのは、母親の実家の寺です。4つ違いの弟が生まれたときに、父が警察の駐在で、母も駐在所を手伝うことあることから2人の子どもを同時に育てることは困難だということから、小学校にあがる寸前まで母の実家に預けられていました。
お寺の用事は数多くて、来客があったときには“猫の手も借りたい”ならぬ孫の手も必要とされていて、幼い子どもでもできる(と祖母も叔母も言っていたものの実際は?)仕事として、お客さんのお茶出しをしていました。お茶出しといっても、茶筒に入った茶葉を急須に入れて、お湯を注いで、湯飲みに入れるだけのことでしたが、大変だったのは茶筒の選択でした。
茶筒は四つあって、模様によって入っている茶葉が違っていました。簡単に言うと上・中・下の三つと、茶葉の値段によるものだけのほかに焙(ほう)じ茶が入っていました。上・中・下の、どれを出すのかは祖母のサインがあって、お客さんのランク(?)によって使う茶葉が違うということで、“すべての人に同じように対応”という仏教の教えとは違ったことをしていました。
ちなみに四つめの茶筒の中身の焙じ茶は市販のものではなくて、古くなりつつある茶葉を自分で焙じて作っていました。焙じるというのは、緑茶の茶葉を火で焙って水分を飛ばすことで、焙炉(ほいろ)という陶器を火にかけて、色と香りの変化を感じ取りながらの手づくりでした。
自分の手づくりを飲んでもらいたい気持ちがあって、3番目の茶筒のサインがあったお客さんには勝手に4番目の焙じ茶を出していたこともあります。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)