コレステロールは“悪玉コレステロール”という言葉もあることから、悪いものというイメージを抱かれることもあります。「それを改めさせるためには、どういう伝え方がよいか」という相談をメディア関係者から聞かれたことがあります。
コレステロールは全身の細胞膜の材料で血管を丈夫にするのにも重要で、ホルモンの材料であり、脂肪を分解する胆汁の材料でもあるので、健康維持にはとても大切なものなので、減らすようなことはあってはいけません。高齢者を対象とした血中コレステロールの量と寿命の長さの長さでも、高すぎる人は動脈硬化のリスクは高いものの、それ以外は低くなるほど寿命が短くなる傾向があります。その話は以前から伝えられてきたので、これは切り口にならないようです。
次に出したネタは、「高齢者が肉を食べろ」という話の元になっているということで、少しは反応がありましたが、これならという反応があったのは昔の話でした。それは、なぜコレステロールが悪いと言われるようになったのかということで、ロシアがソ連と呼ばれていた時代に、ウサギを使って卵を食べさせる試験をしたときに血中コレステロールが大きく上がり、血管にダメージを与えるという結果が得られたからです。
それが人間にも当てはまるかということですが、そもそも卵を食べないウサギに食べさせると吸収されたコレステロールが使われずに血液中で高い状態になります。
コレステロールの吸収率は50%ほどですが、血液中のコレステロールのうち食事に由来するものは20%ほどで、残りの80%ほどは肝臓で合成されたものです。それなのに卵にはコレステロールが多いから、動脈硬化の原因という言い方をするのは、どうかと思い、という話をしました。