発達栄養12 朝食を抜くとビタミンB群が不足する

全身の活動のためのエネルギーは、全身の細胞のミトコンドリアの中にあるTCA回路で作り出されています。ミトコンドリアはエネルギー産生の小器官で、その量は全細胞の重量の10%ほどにもなっているほど、生命維持のために重要な器官だということです。
TCA回路にはブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸が変化したピルビン酸、アセチルCoAを経て変化したクエン酸が使われます。このクエン酸が次々に変化して、その途中でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生します。その次々と変化していくときに必要となるのがビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂です。
ビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂には、それぞれ特性があり、一つの食品だけを食べれば摂取できるというものではありません。また、ビタミンB群は水溶性の性質があるため、細胞内で長く保持されず、毎日食事から摂る必要があります。
体内の保持時間が違っていて、ビタミンB₁とビタミンB₂は24時間ほど保持されるのに対して、ビタミンB₆とビタミンB₁₂は12時間ほどしか保持されません。ビタミンB₁とビタミンB₂は1日に1回だけ食事で補っておけばよいことになります。もちろん、1日に必要な量を摂る必要はあります。これに対して、ビタミンB₆とビタミンB₁₂は半日しか保持されないので、1日に2回は補充しなければならないわけですが、1日に3食のうち、どこで摂るかというと朝食と夕食になります。
ビタミンB₆とビタミンB₁₂が含まれた食品を昼食で摂らなかったとしてもエネルギー産生には影響が出ないものの、朝食か夕食で不足するとエネルギーが充分に作られなくなり、それが全身の活動にも、もちろん脳の働きにも悪影響を与えることになります。
少なくとも朝食を抜いてはいけないわけですが、厚生労働省の国民健康・栄養調査では20代は男性が約30%、女性が約23%も朝食抜きとなっています。国民健康・栄養調査で朝食抜きとされるのは、まったく朝食を食べていない場合のほかに、飲み物だけ、サプリメントだけしか摂らない場合も含まれています。
20代以下の年代では家庭で食事をしているのが原則と考えられているために朝食抜きは少ないはずですが、発達障害では感覚過敏から極端な偏食が起こりやすく、朝食を摂っていたとしてもエネルギー代謝に必要なビタミンB群が不足してしまうことにもなりかねないのです。