ストレスによって発生するホルモンのコルチゾールによって脳の海馬の神経細胞は傷つけられやすくなっています。コルチゾールが多く分泌されるのは心理的ストレスが高まったときで、ストレスをためないことが記憶を保持するためには重要になります。コルチゾールの分泌を抑えるのは、脳内ホルモンのβエンドルフィンで、コルチゾールを抑えるだけでなく、海馬の記憶を高めることも知られています。
記憶は保持時間によって短期記憶と長期記憶に分けられています。海馬は小さな器官であるために数秒から1分程度の短期記憶しかできませんが、大脳皮質は非常に大きな器官であることから数日から数年という長期記憶が可能となっています。
短期記憶は、感覚器が受けた感覚記憶が電気信号に変換され、神経回路を通って海馬に送られ、短時間の保存がされています。この神経ネットワークの流れの中で障害があると、海馬に情報が到達しない、もしくは充分に情報が送られてこないことになり、短期間であっても保存ができないことになります。発達障害でみられる短期記憶の障害でも起こっています。
また、短期記憶された情報が、長期記憶を司る大脳皮質に伝えられるルートに障害がある場合には、短期記憶の情報が長期記憶として充分に伝わらず、すべてを覚えることができなくなります。こういった障害があると、短期記憶が繰り返し大脳皮質に送られる場合にも障害が起こり、長期記憶ができず、覚えたはずの記憶が薄れていくことにもなります。
短期記憶から長期記憶への転送は、睡眠中に行われていますが、眠りが浅いレム睡眠のときに起こっています。睡眠は眠りが浅いレム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠と、眠りが深いノンレム(Non-REM)睡眠とがあり、90分ほどの周期で繰り返されています。レム睡眠のときには眼球が動くことが確認されていて、大脳は休息しているものの、他の脳の機能は働きを続けていることから起こっています。