昔から事業のために必要なものとして、ヒト・モノ・カネと言われてきました。このうちヒトが一番先にくるのは人材が一番大事だから、とよく言われるし、それを口にする経営者も多くいます。これが本音ならよいのですが、経営者や経済学者などの書籍にゴーストライターとして関わってきた昔の話だけでなく、インタビューや取材をしている今でも「実際のところは、どうですか?」と水を向けてみると、「やっぱりカネだね」という人が少なくありません。
ヒトもモノも大事であっても、カネがなければ雇うこともできないし、カネがなければ買うこともできない、ということで、この考えはコロナ禍を経験して強まってきたようです。コロナ禍で仕事を失った人が多い中では、カネさえあれば確かに雇いやすくなっていて、売れない時代には買いやすくなっているのは事実です。しかし、本当に厳しい時代になって本当に必要な人材がカネだけで雇うことができるのか、仕事に協力してもらえるのかというと、そうではないという理解をしています。
実際にヒトが重要な仕事の世界では、万が一のときには、優れた人材は争奪戦になっています。優れた人材がいればモノもカネも引き寄せることができます。いくらカネを積んだとしても、ヒトを引き付けるのはヒト、つまり会社でいえば経営者、団体でいえば理事長や会長の人柄と能力であって、他の会社や団体よりもギャラを多くすれば、よい人材が来てくれるというわけではないのです。
特別な権利を持っていて磐石と思われていた会社がコロナ禍で基盤から崩れたのは、いくらでも目にしました。経営者の独断専行も、社会が普通に回っていたときにはうまくいっても、時代が変われば無力というよりも邪魔でしかなかったという例も見てきました。
万が一のときに備えて、常にヒトにカネをかけるということはできないのは理解ができることです。いざというときになってヒトが来てくれるように備える、社員が厳しい状況で離れることがないように信頼関係を築いておくというのは当然のことですが、実際に厳しい状態になって初めてヒトの重要性について気づいた人も少なくなかったのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)

