睡眠時間の確保は必要ですが、ただ寝ればよいというわけではありません。睡眠は長さよりも質が重要とされていて、一定の睡眠時間を確保したら、その次は、いかに熟睡するかを考えることが大切になります。睡眠の質に影響を与えているのは自律神経で、起きて活動している時間帯は交感神経の働きが盛んになり、夕方以降は副交感神経の働きが盛んになります。
交感神経は興奮作用があり、副交感神経は抑制作用があって、自動車でいえば交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキに該当します。睡眠の質を高めるためにはブレーキの効きをよくする必要があるわけですが、高齢者は交感神経と副交感神経のバランスが取りにくくなっています。
年齢を重ねても交感神経の働きが低下するようなことはありません。それに対して副交感神経は年齢を重ねるほど低下しやすくて、身体を休めている割には身体の興奮作用が収まらないということにもなります。お酒を飲んでからの睡眠は、寝つきはよいようでも、交感神経の働きが強まっているので、寝ている割には疲れが取れない、実は熟睡していないという状態になります。
年齢を重ねてからの自律神経のバランスをみると、副交感神経の働きが充分でないために熟睡しにくくなっています。熟睡しているときに成長ホルモンは盛んに分泌されます。成長ホルモンは成長期が遠い過去のことになった高齢者では疲労回復ホルモンであり、新陳代謝のホルモンとなります。脳の機能回復も成長ホルモンが関わっています。
熟睡できない状態が長年積み重なっていくと、認知機能にも影響が出てくるのは当たり前のことです。副交感神経の働きが高まらない状態であることを考えれば、本来なら副交感神経が優位になる夕方以降の時間帯には、興奮するようなことを避け、交感神経を刺激するブルーライト(液晶テレビやスマホの画面など)も避けることが大切になります。そのような生活を過ごすのは難しくても、できるところから始めてほしいところです。