脳の健康寿命83 熟睡が脳の機能を調整する

人間の身体にはホメオスタシス(生体恒常性)が備わっています。これは環境が変化してもそれに適応して身体の状態を一定に保つ機能のことで、自律神経調整、ホルモン分泌、免疫機能まで、全身のシステムがコントロールされています。そのコントロールの根幹となっているのは脳で、その中でも間脳と呼ばれる呼吸、心拍、体温などの生命維持を司っている部分となります。
脳細胞のエネルギー源はブドウ糖だけです。脳以外の全身の細胞はブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸をエネルギー源として取り込むことができるのですが、脳細胞はブドウ糖しか取り込むことができません。それは脳細胞と血管の間には血液脳関門というゲートがあって、必要なもの以外は通過させない仕組みがあるからです。
間脳と、記憶に関わる海馬は多くのブドウ糖を必要とすることから、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を一定に保つことが大切になります。低血糖だけでなく、高血糖になっても脳細胞に取り込まれるブドウ糖が低下することから、血糖値を正常範囲に保つことが重要です。
エネルギー源があっても、睡眠に時間が充分に確保されていて、さらに睡眠の質も高いことで脳の疲労が取れて、脳は正常な働きをすることができるようになります。
睡眠の質は熟睡していることを指していて、そのためには自律神経の調整が大切になります。夕方以降の時間帯は自律神経の副交感神経の働きが盛んになります。この時間帯に交感神経の働きが盛んになると、副交感神経の働きが抑えられるようになり、リラックスできなくなって、熟睡しにくくなります。テレビ画面、パソコンやスマホの画面、LED照明はブルーライトとなっています。ブルーライトは朝日に含まれる光で、交感神経の働きを盛んにする作用があります。
ブルーライトには、睡眠を調整するホルモンのメラトニンの分泌を抑える作用があるため、寝つきが悪くなり、入眠したとしても熟睡しにくくなり、寝た割には疲れが取れない、脳が疲労したままということが起こります。