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厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動とエネルギー・栄養素について」の「特定保健指導における内臓脂肪減少のためのエネルギー調整の考え方」を紹介します。

〔特定保健指導における内臓脂肪減少のためのエネルギー調整の考え方〕
健康づくりのためには、身体活動と食事を適切に組み合わせることが重要です。体脂肪1kgを減らすために必要なエネルギー量は約7000kcalであり、特に肥満の方の場合は、身体活動による消費と食事で摂取するエネルギー量を調整することで、計画的に減量を図ることが必要です。

エネルギー出納バランスは、エネルギー摂取量からエネルギー消費量を差し引いたものとして定義されます。成人においては、その結果が体重の変化と体格(BMI)であり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回る状態(正のエネルギー出納バランス)が続けば体重は増加し、逆に、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回る(負のエネルギー出納バランス)では体重が減少します。

一方、エネルギー出納のアンバランスは、長期的にはエネルギー摂取量、エネルギー消費量、体重が互いに連動して変化することで調整されます。例えば、長期的なエネルギー制限では、体重変化によりエネルギー消費量やエネルギー摂取量が変化し、エネルギー出納はゼロとなり、体重が安定します。

肥満者もやせの者も、体重や体組成に変化がなければ、エネルギー摂取量とエネルギー消費量は等しいと考えられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動とエネルギー・栄養素について」の「身体活動とたんぱく質の摂取」を紹介します。

〔身体活動とたんぱく質の摂取〕
運動不足は、体たんぱく質異化状態を招き、適度の運動は食事性たんぱく質の利用を高めます。一方、激しい運動は、たんぱく質分解を亢進させることから、運動強度に応じてたんぱく質必要量はU字型を描くと言われています。

たんぱく質摂取量と筋肉量増加の間の用量反応関係に関する系統的レビューによると、日々の総たんぱく質摂取量と筋肉増加との間には、正の用量反応関係が示されました。毎日の総たんぱく質摂取量が体重1kg当たりの0.1g/日増加すると、2〜3か月で0.39kgの増加が期待できます。

一方、1日の体重当たりの総たんぱく質摂取量が体重1kg当たり1.3g/日を超えると、筋量増加の効率が悪くなり、総たんぱく質摂取量と筋量の変化の間は直線的とまでは言えず、総たんぱく質摂取量が多ければ多いほど筋肉量が増えるわけではありません。

また、必要な量以上に摂取することは腎機能をはじめとする健康障害のリスクが高くなる可能性があるため、身体活動量に応じて、たんぱく質を摂取することが重要です。

なお、慢性腎臓病(CKD)においては、たんぱく質摂取が腎機能の低下を促進させる危険性があるため、一般的に腎機能が低下している場合は、たんぱく質制限が行われます。また、高血圧症や糖尿病等の疾患を有している者や高齢者においては、潜在的に腎機能が低下している可能性もあることから、かかりつけ医に相談することが必要です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動とエネルギー・栄養素について」の「身体活動と栄養について」を紹介します。

〔身体活動と栄養について〕
健康の保持・増進のためには、エネルギー収支バランスを適切に保ち、必要な栄養素を過不足なく摂取することが基本となります。また、身体活動量に応じて、エネルギーや栄養素の必要量が変動します。

エネルギーを産生する栄養素には、たんぱく質、脂質、炭水化物があり、それらの構成成分が総エネルギー摂取量に占める割合は、エネルギー産生栄養素バランスとして示されます。

エネルギーや栄養素は、食事から摂取することから、必要な栄養素等の種類と量を確保するために、食事を整えることが必要となります。何をどれだけ食べたら良いかの基本は栄養素のバランスであり、必要な量は、食事摂取基準として示されているので、参考にしましょう。

国際オリンピック委員会(IOC)は、トップアスリートのように激しい運動をしている者は、相対的エネルギー不足により健康とパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを指摘しています。

身体活動が多くなり、エネルギー不足になった場合、アスリートに限らず同様な症状が起こる可能性があるため、身体活動量とエネルギー・栄養素の必要量を確認することが大切です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動支援環境について」の「運動に関する物理的環境の整備」「運動に関する社会的環境の整備」「他部門との協働」を紹介します。

〔運動に関する物理的環境の整備(運動の場所)〕
運動は様々な場面で行われます。運動場所は運動施設のみならず、道路や公園、自然環境なども含まれます。

*体育館、グラウンド、プールなどの運動施設を整備しましょう。

*遊歩道、自転車道、公園、緑地、自然環境などは運動の場として重要です。運動の実施に適した場所になるように整備しましょう。

こどもの遊び場、こどもが集まる場所の整備、保育園・幼稚園といった施設の工夫で、こどもの運動量が増える環境を構築しましょう。新たな施設の建設は容易ではありません。既存の施設が多くの住民にとって「運動に適した場所」になっているかを確認し、整備しましょう。

〔運動に関する社会的環境の整備(運動の機会)〕
こどもの運動機会を増やしましょう。
*体育、部活動、休み時間など、運動の機会を充実させましょう。
*外遊びの機会を確保しましょう。

運動する機会を増やしましょう。例えば、総合型地域スポーツクラブなどのスポーツクラブ、運動・スポーツイベント、民間・行政が提供する運動プログラムなどの充実や、ご当地体操、ラジオ体操などの普及啓発が考えられます。

運動する仲間、運動自主グループ、運動指導者などを充実させましょう。

医療・ヘルスケアにおいて必要な身体活動・運動指導が確実に行われるようにしましょう。運動場所、運動機会へのアクセス性を高めましょう。
*運動場所や運動機会が充実していても、アクセスが悪いと活用されません。存在を知らない、交通手段がない、申し込み方法がわからない、時間が合わない、費用が高すぎる、参加条件が適さない、手続きが煩雑であるなど、参加を阻害する要因がないか検討し、既存の施設やプログラムを有効活用しましょう。

運動促進の啓発を行いましょう。
*運動促進キャンペーンなどで、運動に関する知識を普及して、行動変容を呼びかけましょう。単なる情報提供にとどまらず、他の環境整備、イベント、運動プログラムなどを組み合わせること(多要素化)が有効とされています。

〔他部門との協働〕
環境整備の実現には都市計画、教育、スポーツなどの他領域との連携が欠かせません。2018年にWHOが発表した「身体活動に関する世界行動計画2018−2030」では、「複数の機会・複数のベネフィット」がキーワードになっています。

すなわち、身体活動推進の機会(対策)は多様で、一見、身体活動や健康とは関係ない様々な政策、対策が関係しています。都市計画、公共交通、教育などの他領域の事業にも目を向けてみましょう。

また、ある領域の課題が別の領域の課題解決につながる場合があります。例えば、都市計画の政策が身体活動に資する場合や、身体活動推進施策が防犯に資する場合などがあります。他部門との協働が課題解決の鍵になることを確認しましょう。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動支援環境について」の「生活活動に関する社会的環境の整備」を紹介します。

〔生活活動に関する社会的環境の整備(生活活動の機会)〕
生活活動は、移動、仕事、家事、趣味活動など、運動以外の様々な目的で実施されます。生活活動の機会を増加させることが健康増進につながります。

活動的な移動(active travel)は多くの研究で、その健康増進効果が確認されています。

*通勤:自動車ではなく、徒歩、自転車、公共交通を用いて通勤を増やす方法を考えましょう。

*通学:通学はこどもにとって大切な身体活動の機会にもなります。安全を確保した上で、活動的な通学手段が選べる環境を整備しましょう。学校の統廃合や、安全上の問題から、スクールバスを導入することで、通学での歩行量が減少することもあります。例えば、安全を確保した上で、スクールバスの駐車場を学校から少し離れた場所に設定するといった取組も考えられます。

*買い物:車を用いずに、徒歩、自転車、公共交通を用いて、買い物する人を増やす環境整備、対策を考えましょう。

職場では、健康づくりに関する職場のポリシー、長時間労働の防止、健康教室の実施、インセンティブの導入、立ち会議の導入などの対策が考えられます。

地域活動の活性化、ソーシャルキャピタルの醸成は、身体活動によい影響を与えることが期待されます。社会参加は身体活動を伴う場合が少なくありません。特に高齢者では、その機会を増やす対策が単体活動の推進につながります。

*就業、地域活動、趣味の活動、通いの場などの外出の機会を増やすことは特に高齢者において重要と考えられます。

*これらの対策は身体活動のみならず、認知機能の維持・向上、QOLの向上に資することが期待できます。生活活動促進の啓発を行いましょう。

身体活動促進キャンペーンなどで、身体活動に関する知識を啓発して、行動変容を呼びかけましょう。単なる情報提供にとどまらず、他の環境整備、イベント、身体活動プログラムなどを組み合わせること(多要素化)が有効とされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動支援環境について」の「生活活動に関する物理的環境の整備」を紹介します。

〔生活活動に関する物理的環境の整備(生活活動の場所)〕
生活活動とは、日常生活の中で実施される身体活動です(健康・体力の維持・増進を目的として、計画的・定期的に実施される「運動」を除きます)。家事で身体を動かすこと、通勤や通学で歩いたり、自転車に乗ったりすること、様々な形で実施されます。自動車に過度に依存せず、歩行や自転車、公共交通を利用して生活できる地域環境の形成が、自ずと身体活動を高め、健康を維持・増進することにつながります。

このような自然と健康になれる環境を作るには、「滞在快適性等向上区域(まちなかウォーカブル区域)を設定し、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりを推進することが重要と考えられます。

また、都市計画部門との協働で、歩いて暮らせる地域づくりに努めていく必要があります。

公共交通へのアクセスがよい地域では、身体活動が高いことが知られています。

微視的な環境、すなわち都市空間や建築のデザインの工夫によって、歩行、自転車利用、外出、階段利用などの促進が期待できます。歩行・自転車空間の整備、広場の整備、景観の改善、建物の工夫などがあげられます。

身体活動を促すナレッジの工夫も可能です。

職場環境の整備も身体活動推進、座りすぎの予防に役立ちます。休憩場所やコピー機などの共用機器の配置の工夫、立ち机の導入、立ち会議の設備の導入などがあげられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「身体活動支援環境について」の「推奨の背景とポイント」を紹介します。

〔推奨の背景とポイント〕
適度な身体活動は健やかな人生のために不可欠ですが、これまでの様々な取組にもかかわらず、国民の身体活動は減少傾向にあります。この背景には、身体活動を減少させる地域社会の変化があります。

例えば、社会の自動車依存度が高まったこと、インターネットなどの普及により移動が減少したことなどがあげられます。問題の解決には身体活動を高める個人の努力だけでなく、地域社会・職場・学校などの環境を変える必要もあります。

本ガイドでは、環境整備を以下のように整理しました。4つすべての視点での取組が求められます。これらの取組を効果的に進めるためには、教育、都市計画、公共交通といった複数の領域の協働が必要です。

物理的環境の整備(場所の整備)
生活活動
「まちづくり・地域環境・職場環境の整備」
〈巨視的環境〉
*都市計画:身体活動を促進する地域環境の構築
*交通計画:身体活動を促進する公共交通政策
〈微視的環境〉
*身体活動を促進する都市・建築空間デザイン・身体活動を促進するナッジ、安全・快適な*歩道、自転車道、階段、広場、建物など
*職場環境の整備:オフィスレイアウト、立ち机、立ち会議の設備、階段のデザイン、共用スペースのデザイン、自転車置き場、シャワールームなど

運動
「運動する場所の整備」
*運動施設の整備、民間運動施設の誘致
*遊歩道、自転車道の整備
*公園、緑地などの整備
*こどもの遊び場、こどもが集まる場所
*保育園・幼稚園の建築・空間デザイン
*自然環境(山、河原、海岸など)の整備

社会環境の整備(機会の創出、提供)
生活活動
「生活活動の機会の創出・増加」
*活動的な移動(active travel)の推進:徒歩、自転車、公共交通による通勤・通学・買い物などの促進(モビリティ・マネジメント)
*地域活動の活性化、ソーシャルキャピタルの醸成
*高齢者の生活活動の機会の増加:就業、社会参加、通いの場、外出機会、家事などの家庭内での役割の増加、など
*職場:組織のポリシー、勤務時間、職場主導の健康教室、インセンティブ、立ち会議の導入、階段利用の促進、座りすぎを避けることの推奨など
「情報提供・コミュニケーション」
*身体活動・運動ガイド2023の普及・啓発、身体活動推進キャンペーン

運動
「こども」
*体育、部活動の充実、外遊び機会の増加
「運動・スポーツの進行」
*総合型地域スポーツクラブ、スポーツイベント、スポーツ産業の振興など
「運動プログラム」
*自治体、民間などが提供する運動プログラムの増加
*ラジオ体操、ご当地体操などの活用
「仲間・指導者」
*一緒に運動してくれる仲間、運動自主グループ
*運動指導者の充実
「医療・ヘルスケア」
*医療・ヘルスケアにおける身体活動・運動指導の充実
*運動指導が行える医師などの保健医療専門職の充実
「アクセスの改善」
*運動場所、運動する機会の認知・アクセス(空間的、時間的、経済的)を高める
「情報提供・コミュニケーション」
*身体活動・運動ガイド2023の普及・啓発、運動推進キャンペーン
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「全身持久力(最高酸素摂取量)について」の「基準値の改訂」「全身持久力の評価法」「全身持久力を維持・向上させる方法」を紹介します。

〔基準値の改訂〕
「健康づくりのための身体活動基準2013」で示された全身持久力の基準値は、日本人男性の20歳代で推定平均値より1〜1.5メッツ低く、約90%の20歳代男性が旧基準値を達成していました。

一方、50歳代以上では男女とも旧基準値が推定平均値より1〜1.5メッツ高く、この世代で旧基準値を達成できる者は5〜25%に過ぎませんでした。基準値が国民の実情と乖離している場合、「余裕で基準値を超えている」「基準を達成することはとてもできない」といった誤った認識を、健康づくりに取り組む多くの個人や集団に対して生じさせる可能性が懸念されます。

このことから、これまでの疫学研究のエビデンスと今回示された推定標準値に基づき、新たな全身持久力の基準値を性・年代別に示すこととしています。

〔全身持久力の評価法〕
全身持久力は自転車エルゴメーターやトレッドミルを用いた漸増強度運動負荷試験中の呼気ガス分析によって観察される酸素摂取量の最高値です。全身持久力を実測するためには、高価な運動負荷装置や呼気ガス分析装置とそれを駆使する高い技術が必要であり、個人が気軽に全身持久力を実測することは困難である。

代替法として疲労困憊に至らない2〜3段階の運動負荷試験中の強度と脈拍数の関係から全身持久力を推定する方法がフィットネスクラブなどで用いられています。また、スポーツ庁の体力・運動能力調査で用いられている20mシャトルランや6分間歩行といったフィールドテストの結果から推定することも可能です。

特定健康審査における標準的な問診票において全身持久力の簡便な評価として歩く速度を調査しています。近年では、ウエアラブルデバイスによるGPSで測定した移動距離と移動中の脈拍数との関係から全身持久力を推定する方法も普及しつつあります。

〔全身持久力を維持・向上させる方法〕
全身持久力は、肺で大気から取り込んだ酸素を、心臓から血液に乗せて運搬し、活動筋で糖や脂肪を分解することで身体活動の遂行に必要なエネルギーを酸性する能力です。全身持久力の向上には、歩行、ランニング、水泳などの有酸素性身体活動の習慣的実施が有効です。

中高強度で、1回30分間、週当たり3回以上の継続実施が推奨されています。安全と効果のバランスから、強度は全身持久力の50〜75%程度、主観的には「ややきつい」と感じる程度が適切です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「全身持久力(最高酸素摂取量)について」の「科学的根拠」「現状」を紹介します。

〔科学的根拠〕
全身持久力と死亡や非感染性疾患の発症との関係を検討したコホート研究を対象とした最新の系統的レビュー及びメタ解析の結果によると、両者の間には直線的な負の量反応関係が見られ、全身持久力1メッツ当たりの総死亡や循環器病死亡の相対危険度が10〜20%ほど低値を示すことが示唆されています。

したがって、全身持久力が低い人から高い人まで、現状より少しでも全身持久力を高めることによって、健康上の大きな利益を得ることが期待できます。

〔現状〕
現状の全身持久力の現状を把握するために、日本人の全身持久力の記述統計値の報告に主眼を置いている論文の系統的レビューを行い、標準値の推定を行いました。

2名の研究者が検索された文献を独立してレビューし、最終的に23本の原著論文が採択されました。各採択論文から、延べ男性5万4611人、女性2万4100人の全身持久力の平均値及び標準偏差を抽出し、それらを統合することで推定平均値と分布を算出しました。

日本人の全身持久力の推定平均値とその分布を性・年代別に示しました。10歳代までは増加するが、20歳代以降は加齢に伴い低下し、その低下は線形ではなく、20〜30最大で大きく低下、40歳以降は緩やかな低下でした。重い荷物を運ぶといった8メッツの強度の活動を3分以上継続できるのは、男性の60歳代、女性の40歳代のおよそ半数であることが見て取れます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表しました。その中の「全身持久力(最高酸素摂取量)について」の「全身持久力の重要性と基準値を改訂する必要性」を紹介します。

〔全身持久力の重要性と基準値を改訂する必要性〕
全身持久力の指標である体重当たりの最高酸素摂取量は、より厳密に測定される最大酸素摂取量と同様に、様々な要因による死亡や疾患発症の強力な予測因子であることから、身体活動・運動を通して全身持久力を維持・向上することが推奨されています。

厚生労働省は、「健康づくりのための身体活動基準2013」において、性・年代別の全身持久力の基準値(Reference value)を示しています。ここでの基準値とは、生活習慣病などの発症やそれらによる死亡のリスクを低下させることが期待される値を示しています。

全身持久力の基準値を健康づくりの場面で活用するためには、日本人の実態を示す標準値(Standard value:平均値、中央値、標準偏差、信頼区間など)も明確にする必要があります。

しかし、これまで我が国において全身持久力の標準値を明らかにする試みは行われてきませんでした。

全身持久力の標準値を明らかにするためには、本来、国民を代表する標本を対象に大規模な測定を行う必要がありますが、サンプリングと実測に要する経済的・時間的コストが大きく、実現が困難であるため、これまでに蓄積された日本人を対象に全身持久力を測定した研究結果を収集・統合することにより、日本人の性・年代別の全身持久力の標準値(平均値とその分布)の推定を行いました。

得られた推定標準値と「健康づくりのための身体活動基準2013」で定められた全身持久力の基準値を比較することによって、基準値の改定の必要性を検討しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕