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白髪や薄毛については、まるで都市伝説と思われるようなことが言い伝えられています。その代表的なものが「白髪はハゲない」というものです。白髪になればハゲることはないという意見がある一方で、白髪でも白髪でなくてもハゲる人はハゲるという意見もあって、白髪が増えてきた人に不安を与える結果となっています。

この疑問を解決するには、白髪と薄毛のメカニズムを見ることが近道です。白髪は毛母細胞の色素形成細胞のメラノサイトが関係しています。メラノサイトで作られるメラニンが黒髪のもとで、メラニンが多く作られなくなると毛髪の色が徐々に薄くなっていきます。

そして、メラノサイトでメラニンが作られなくなると、だんだんと色素が抜けて白髪になります。

薄毛のほうは、毛母細胞の活動が遅れるか停止して、毛髪の伸びが遅れたり、伸びなくなって抜け毛のスピードに発育のスピードが間に合わなくなることで起こります。両方ともに毛母細胞が関係しているものの、起こる原因が異なっているので、直接的な関係はありません。

白髪の原因を見ていくと、親からの遺伝が関係していることがわかります。また、薄毛のほうも遺伝が関係しています。白髪にも薄毛にも遺伝が関係していることから、これも関係があるのではないかと考えられがちですが、白髪の場合はメラニンの材料がメラノサイトに送られにくくなるという体質が関係しています。

これに対して薄毛のほうは毛髪の発育に影響する男性ホルモンの分泌が関係しています。同じ遺伝であっても、作用しているところが違っています。

両方の体質が遺伝することも可能性としてはあるものの、その可能性は、ごく少ないはずです。

白髪になるとハゲないと言われるようになったのは、薄毛が進むと白髪が増えてきたとしても白髪となる毛髪が少なくなっているので、ハゲている人は白髪にはならないと見られがちです。

極端な薄毛の人は毛髪の色までは目がいかなくなります。白髪が多くても、白髪よりもハゲのほうが注目されてしまいます。「白髪はハゲない」ではなく、「ハゲている人は白髪が少ない」というのが正解ではないでしょうか。

また、目の錯覚も関係しています。黒髪の場合には頭皮の色との差が大きいので、薄毛になると頭皮が見えてきて、それだけ薄毛が目立つようになります。これに対して白髪の場合には頭皮の色との差が小さいので、白髪で薄毛になってきても目立たないということです。

毛髪は年齢を重ねていけばメラノサイトの能力が低下するので、どうしてもメラニンが作られなくなっていきます。総白髪の人は、ハゲずに毛髪が残ったということで、このことが白髪はハゲないと言われる要因とされているのです。

白髪が増えてきたときの、よくある対処というと、白髪が目立たないように髪型を変える、黒髪で白髪を隠すという消極的な方法から、白髪を黒く染める、白髪を抜くという方法まで、さまざまあります。

白髪の本数が少ないときには目立つところを抜くという方法を取る人が多いかもしれませんが、白髪の本数が増えてくると抜いてばかりはいられません。というのは、「白髪を抜くと白髪が増える」と言われるからです。

これは本当のことなのかということですが、白髪を抜いたあとから元の黒い毛髪が生えてきたら問題はないものの、毛髪の毛母細胞のメラノサイトの状態が同じであれば、メラニンを作り出す力も変わらないので、また生えてくるのは白髪ということになります。

もちろん、毛母細胞の状態が改善されて、メラノサイトが活性化されて、メラニンが増えてきたとしたら黒い毛髪が生えてくる可能性がないわけではありません。しかし、可能性としては低いものと考えられています。

「白髪を抜くと白髪が増える」というのは、白髪を1本抜いたら、そこから生えてくる白髪が2本になるという意味ではありません。もしも抜いたよりも多くの毛髪が生えてくるのだったら、薄毛の人は白髪を抜けば薄毛が解消されることになるわけですが、そんなことはありません。あくまで抜いて次に生えてきたとしても、それは同じだけの本数でしかありません。

白髪を抜くと、他の黒い毛髪が白髪になっていくというのは、たまたま白髪が増えやすい時期で、抜いた部分の周りが遅れて白髪になっていったということです。

白髪が気になって抜くのはわからないではないのですが、抜くことによって毛根を傷つけてしまい、炎症が起こるなどして、毛母細胞の成長に悪影響を与えることがあります。

その悪影響がメラノサイトがメラニンを作り出す能力を低下させて、色素が薄くなるということならまだしも、悪くすると抜いたことによって二度と生えてこないということにもあるので、気になるから抜いてしまえというのはやめたほうがよいということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

白髪が目立ってきたときには、二つの選択が迫られます。白髪を隠さずに何もしないか、それとも白髪を染めて黒くするか、です。白髪になるとハゲないと言われる一方で、部分的に白髪があると毛髪が薄く見えるということもあって、白髪のままでいるのは薄毛傾向にある人にとっては勇気が必要なことかもしれません。

とはいっても、白髪を染めることについては、抵抗感がある人は少なくありません。というのは、「白髪を染めると白髪が増える」と昔から言われているからです。

染める回数が増えたり、染める範囲が増えた分だけ白髪が広がっていくわけではないものの、染めたことによって白髪が増えるようなことになってはいけないと考えて、躊躇する人がいるのは当たり前かもしれません。

白髪染めと白髪の関係について考えていく前に、まずは白髪になる仕組みについてみていくことにします。毛髪は透明なパイプのようなもので、パイプの中に黒い色素が詰まっていれば光を吸収して黒く見えるようになります。

黒い色素が少なくなってくると黒色から茶色、黄色に向かって変化していき、色素が抜けてしまうと光を反射して白く見えるようになります。
毛髪の根元には毛母細胞があって、ここで毛髪が作られています。毛髪が作られるときには黒色の色素のメラニンが内部に取り込まれて、毛髪が黒くなります。

日本人は黒髪の人が圧倒的に多いのは、黒色に見えるメラニンが多いからです。メラニンには種類があって、日本人は赤褐色のユウメラニン(真メラニン)が多く、欧米人は黄赤色のフェオメラニン(亜メラニン)が多くなっています。

そのために欧米人は茶色やブロンド(黄色)の髪となっています。黒髪をブリーチしていくと先にユウメラニンが壊されて赤色からオレンジ色に変化して、さらにブリーチするとユウメラニンがなくなり、フェオメラニンが残ってオレンジ色から黄色に変化していきます。

メラニンはメラノサイトという色素形成細胞によって作られています。年齢を重ねると白髪が増えていくのはメラノサイトの働きが低下して、メラニンの量が減っていくからです。

メラニンが作られなくなるのは加齢だけでなく、親からの遺伝によるメラニンが作られにくい体質、紫外線で毛母細胞がダメージを受けることによるメラノサイトの働きの低下、ストレスによる血行不良でのメラノサイトの働きの低下、食生活の乱れによるメラノサイトの栄養不足などがあげられます。

若いうちから白髪が増える、いわゆる若白髪は、複数の原因によって生じるものだと考えられています。

若白髪でなければ、白髪が目立ってきたときに生活改善をすれば、白髪の進行を遅らせることができるようになると一般には考えられていますが、もう一つの白髪の原因が明らかになってきました。それは活性酸素の発生です。

活性酸素は、通常の酸素のプラスとマイナスの電子のバランスが崩れた酸素で、酸化物質に触れることで多く発生するようになります。活性酸素を発生させるものとしてパーマ剤やカラー剤(白髪染め)などもあげられています。

白髪染めはアルカリ剤が毛髪の表面のキューティクルを開いて染料を毛髪の中に浸透させ、続いて酸化剤がメラニンを分解して、染料を毛髪の内側に定着させます。そのために酸化させるための薬剤が必要となっているのです。

活性酸素の一つの過酸化水素が発生するとメラニンの材料であるチロシンが酸化して、メラノサイトがメラニンを作りにくくなって白髪が増えるようになります。

白髪染めを使えば、少なからず過酸化酸素が発生して、白髪になるのかというと、必ずしもそうではありません。過酸化酸素が発生して白髪につながるのは、毛母細胞がダメージを受けるからです。

白髪染めは毛穴から出ている白髪を根本から染めたいと考えて、しっかりと着色する人がいます。その気持ちはわからないではないのですが、頭皮まで染まってしまうような染め方をすると、毛母細胞の酸化を進めてしまうことになります。

そうはいっても市販の毛染め剤を使って家庭で染めた場合には、家族などに染めてもらったとしても毛髪だけを染めるのはテクニック的に難しいことです。ヘアケアのプロは、白髪染めは美容院で行うことをすすめています。

しかし、料金的な問題もあって、なかなか行けないという人も少なくないはずです。過酸化酸素は揮発させて消去させることができるのですが、市販のカラー剤には揮発成分を使うことが許可されていません。それに対して、美容院で使われるプロ用のカラー剤には揮発成分によって過酸化水素を空中に飛ばすことが許可されています。

白髪染めを使うと白髪が増えると感じている人は、美容院での白髪染めを考えてもよいかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

生まれつき毛髪の量が少なく、縮れ毛である先天性乏毛症・縮毛症という疾患があります。薄毛は個性であり、縮毛も個性とみることができますが、先天性乏毛症・縮毛症は疾患であるので、本来なら治療の対象になるものです。

しかし、先天性乏毛症・縮毛症は治療の対象とはされず、対症療法の一環として、かつらの使用がすすめられるか、個性として受け入れるしかないという程度でした。

先天性乏毛症・縮毛症の国内の患者数は約1万人と推定されています。これだけの患者が存在するにも関わらず、治療法が確立されていないのは発症機構が明らかでないことから、治療法も確立されていなかったからです。

その治療法に取り組んできたのが名古屋大学医学部附属病院と同病院の医学系研究科、藤田医科大学皮膚科学講座の研究グループで、2016年からの継続した研究の結果、有効性と安全性が評価された治療薬を発見しました。

その治療薬はAGA治療薬でもあるミノキシジルで、LIPH遺伝子変異による先天性乏毛症・縮毛症に効果があると報告されました。AGAは男性型脱毛症で成人男性によくみられる髪が薄くなる状態を指しています。

LIPHはリパーゼHと呼ばれるホスファチジン酸という脂質を分解して、毛髪の成長や毛包の分化に必要なリゾホスファチジン酸を作り出すために必要な酵素です。

研究によってLIPHの遺伝子の変異が主な原因であることが明らかになりました。人間は一般的に一つのタンパクを作る遺伝子を両親から受け継いで1ペア(二つ)持っていますが、その両方の遺伝子が変異を持つ場合に病気を発症する遺伝形式があり、LIPH遺伝子は、これに該当している常染色体劣性遺伝となっています。日本人は約100人に2人の割合でLIPH遺伝子の変異を持っているため、決して稀ではない遺伝子変異となっています。

ただし、LIPH遺伝子の変異は両親から受け継いだ1ペアの遺伝子のうち変異を有する遺伝子を一つは持っているものの、もう一つの遺伝子に変異がないもので、そのために先天性欠乏毛症・縮毛症は発症していない保因者となっています。先天性乏毛症・縮毛症は1万2000人に1人の割合であるので、これについては稀な遺伝子変異ということができるかと思います。

研究成果ですが、LIPH遺伝子変異による先天性乏毛症・縮毛症の患者を対象に、1%ミノキシジルローションを外用した特定臨床研究によって、有効性と安全性が評価されました。

対象となったのは4歳から38歳の小児5例を含む8例で、1日2回、頭皮に塗ってもらった結果、200日から400日の治療日数で8例全員に毛量の変化で毛髪の改善効果があり、そのうち4例は高い効果がみられました。

ミノキシジルは血管拡張薬として高血圧治療のために開発された経口薬ですが、後に発毛効果があるとして発毛剤に転用されました。ミノキシジルには壮年性脱毛症における発毛と脱毛の進行予防の効果が認められています。

壮年性脱毛症は男性型脱毛症やAGA(Androgenetic Alopecia)とも呼ばれます。ヘアサイクルの初期成長期には男性ホルモンが作用すると後期成長期毛と呼ばれる太い毛髪に成長しなくなり、後退期から休止期になることから毛髪が薄くなる症状を指しています。

ミノキシジルの有効性のメカニズムについては詳細なことは明らかにはされていないものの、毛包に直接作用して毛乳頭細胞から作られる毛母細胞を刺激する物質の産生を促進する働きや、毛乳頭細胞を増殖させる働きがあり、正常なヘアサイクルに戻すことが確認されています。これに血管を拡張して血流を促進させる効果も合わさって発毛を促進していきます。

ミノキシジルの外用は、安全性の確認については小児を対象とした大規模な臨床試験が実施されていないため、小児への使用は承認されていません。共同研究では安全性を確保した試験を続けたところ、副作用(頭皮の乾燥、多毛、逆まつげなどの)は認められたものの、重篤な副作用は認められませんでした。

小児にも有効性が認められたことで、早期の治療が期待される先天性乏毛症・縮毛症への道が開かれた研究報告となりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

円形脱毛症は、通常の脱毛による薄毛とは違って、円形や楕円形の脱毛斑と呼ばれる脱毛部分が突然起こるものです。俗に「10円ハゲ」と呼ばれる10円玉くらいの脱毛が起こることが知られていますが、それ以上の広範囲に広がるものもあります。

再び発毛が起こる場合もあれば、完全に脱毛して元には戻らないものまで、さまざまなタイプが確認されています。

全人口の1〜2%に発症されるとされますが、円形脱毛症は、それまでの毛髪の状態、つまり薄い状態か濃い状態かには関係がなく、しかも特に兆候らしいことがないままに急にまとまって抜けるということが起こります。

脱毛部分が多いと、頭皮が直接見えるようになります。朝起きたときに枕に抜け毛がついているのは普通のことですが、まとまって抜けるようになると、これは円形脱毛症も疑われます。鏡にうつして自分で見ることができない部分もあるので、円形脱毛症の確認は合わせ鏡にするか、他の人に頭頂部や後頭部を見てもらうようにします。

初めから10円玉ほどの脱毛が起こる場合だけでなく、数本が抜け落ちるところから始まる場合もあります。まとまった脱毛が気になるときには、脱毛した部分の周りを引っ張ってみます。このときに簡単に抜けて、しかも抜くときの痛みが感じられない場合には、円形脱毛症の可能性が高いといえます。

円形脱毛症には脱毛の仕方によって複数のタイプがあります。毛髪に円形か楕円形の脱毛斑ができる最も多いタイプは円形脱毛斑が1つだけの単発型です。毛髪だけでなく、眉毛や体毛に起こる場合もあります。年齢にも性別にも関係なく、ほぼ同率で起こるのが特徴的で、80%ほどは1年以内で治るものの、次の多発型に移行する場合があります。

多発型は、円形脱毛斑が2つ以上起こるもので、治療を行っても完治するまで1〜2年かかる場合があります。円形脱毛斑が結合して拡大する多発融合型もあります。

多発融合型の結合が細長く、後頭部から側頭部の生え際に沿って蛇のように広がるのは蛇行型と呼ばれます。これも完治まで2年以上かかる場合があります。さらに進行して、脱毛斑が頭部全体に広がり、毛髪が完全に抜け落ちるのが全頭型で、ここまで進むと非常に治すことは難しくなります。

ここまで進んでしまう前に、できることなら円形脱毛症が起こり始めたときに、その原因を明らかにして、早めの対応をすることが重要になります。

円形脱毛症はアトピー性皮膚炎がある人に起こりやすいと言われているものの、それだけが原因ではありません。アレルギー症状は免疫が働きすぎる免疫異常によって起こるとされています。

本来なら外敵から体を守るはずの免疫細胞が、自分の細胞を攻撃してしまうのが自己免疫疾患で、毛髪の細胞が攻撃されると正常な発毛サイクルが乱されて、いわゆる「ごっそりと抜ける」という状態になります。

自己免疫疾患は感染症による肉体的なストレスや精神的なストレス、極度な疲労などによって体内の調整がコントロールできなくなることが要因となっています。免疫を司っている免疫細胞には白血球とリンパ球があります。リンパ球には抗体を作って外敵と戦うB細胞と、外敵を直接攻撃するT細胞があります。このうちT細胞が毛根の細胞を異物(外敵)だと間違って攻撃するのが円形脱毛症の原因と考えられています。

円形脱毛症は自己免疫疾患だけが原因で起こるものではなくて、アトピー素因がある人、遺伝的要素、精神的ストレス、ホルモン異常などが指摘されています。アトピー素因というのは、アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のどれか一つ以上)を持っている人を指していて、円形脱毛症の40%以上がアトピー素因を持つと言われます。

また、本人だけでなく、家族にアトピー素因がある場合も円形脱毛症が起こりやすいとされています。

円形脱毛症は遺伝的な要素があるということですが、それはアトピー素因だけでなく、円形脱毛症の家族がいる場合にも起こりやすくなっています。親等が近いほど発症率が高く、欧米の調査では円形脱毛症の一親等(親子)の発症率は、二親等以上の家族の10倍にもなると報告されています。それだけ遺伝が強く関係しているということです。

精神的ストレスは円形脱毛症の大きな発症要因で、精神的なストレスが高まるほど自律神経の交感神経の働きが盛んになります。強いストレスが長く続くと、交感神経が働きすぎることによって血管が収縮して頭部の血流が低下して、毛根への血流が低下します。

交感神経による血流の低下を補うために血圧が高まり、心拍数も増加します。全身の酸素不足から呼吸数も増えていきます。このような状態になっているときには、脱毛のリスクが高まっているといえます。

円形脱毛症は女性に多く、さらに若い女性の発症頻度が高くなっています。その原因として考えられているのが、女性ホルモンの減少で、特に指摘されるのが妊娠から出産後までの女性ホルモン値の変化です。

妊娠中には女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が多くなります。エストロゲンには発毛促進作用があり、これが減少すると発毛が抑制されて、抜け毛も増えるようになります。生理周期でも排卵期の前後のエストロゲンが多い時期には発毛が進み、毛髪の艶もよくなるものの、その変化はわずかです。

ところが、妊娠から出産後までに発毛が進んだあとに、急にエストロゲンが減少することで産後の3か月くらいには抜け毛が多くなります。このときに、他の要因が重なると円形脱毛症が起こりやすくなるのです。

円形脱毛症は多くの要因があり、遺伝子が関わってくることから、実際の原因は発祥の仕組みは明確にはされていませんでした。円形脱毛症の原因遺伝子については世界の研究機関で解明が試みられてきましたが、これまで同定されることはありませんでした。

この解明に取り組んだのが順天堂大学(大学院医学研究科皮膚科学・アレルギー学)と東海大学(総合医学研究所)の共同研究グループで、円形脱毛症の原因遺伝子の一つとしてCCHCR1を世界で初めて同定しました。

そして、円形脱毛症患者のCCHCR1遺伝子のリスクアリルをゲノム編集法で同じ遺伝子の変異を持つマウスを作成したところ、円形脱毛症患者と極めて類似の症状を再現できたと発表しました。

さらに、CCHCR1遺伝子のリスクアリルの有無によって円形脱毛症患者の毛髪の状態に差異が生じることを確認しています。

わかりにくいかと思われるので用語から説明していくと、CCHCR1(Coilde-coil alpha-herical rod protein 1)は、タンパク質の一つで、毛髪にもあることが明らかにされています。

遺伝情報と疾患の発現の関係性を統計学的に解析する遺伝統計学の手法を用いて円形脱毛症の原因遺伝子を探索したところ、人間の第6染色体の一部であるMHC領域(主要組織適合遺伝子複合体)に存在するCCHCR1遺伝子に原因となる変異があることを発見しました。

リスクアリルは疾患の発症リスクを高める対立遺伝子のことで、対立遺伝子(アリル)は両親から引き継いだ異なる遺伝子遺伝情報を有する遺伝子を指します。

原因遺伝子の解明のために共同研究グループは円形脱毛症患者の血液由来のDNAを用いた遺伝学的な解析を行い、遺伝子編集技術を用いたモデル動物の作成を行いました。

円形脱毛症患者と健常者の合計700人の血液のゲノムDNAを解析したところ、CCHCR1を構成する約750個のアミノ酸の配列のうち、587番目の配列が通常のアルギニンではなく、トリプトファンに置き換わっていることを発見しました。

この配列の違いは健常者では5%であるのに対して、円形脱毛症患者は15%で確認されました。これによって円形脱毛症患者は遺伝子の配列のタイプによって発症リスクが3倍になることを明らかにしました。

これによってアミノ酸の配列の違いが円形脱毛症の原因となっていることは明らかになりましたが、この違いによって、なぜ円形脱毛症が生じるのかという発症メカニズムの解明を進めることができます。

それによって円形脱毛症のタイプ別の診断法と各タイプに特化した治療法の開発も可能になると期待されています。それまでは、リスクが高い人は他の要因の影響を受けないように、ストレスの解消を初めとした予防策が重要になってくるということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

「薄毛の人は精力が強い」と昔から言われてきました。薄毛を気にする人への励ましの言葉だと言われることもあります。薄毛の人は実年齢よりも年齢が上に見られがちで、そのイメージの年齢に比べたら精力が強いというのが一般に言われていることです。

別の考え方もあって、精力が強いということは男性ホルモンが多くて、これが薄毛に関係しているということです。男性ホルモンは男性の場合は睾丸や副腎で作られています。

男性の場合は、ということは女性でも作られているということですが、女性の場合には男性ホルモンは卵巣と副腎で作られています。

男性ホルモンも女性ホルモンも材料となっているのはコレステロールで、エストラジオールという女性ホルモンは男性ホルモンから作られています。エストラジオールは卵胞ホルモンのエストロゲンの材料で、受精に欠かせない重要な女性ホルモンです。女性には男性ホルモンも重要だということがわかります。

男性の場合には男性ホルモンの大半はテストステロンで、筋肉を増やし、体毛を濃くする、制欲を高めるというプラス作用がある反面、マイナス面もあります。それは皮脂の分泌を増やすことだと指摘されます。

皮脂が増えると毛穴が詰まって、発毛が抑制されると考えられがちですが、AGA(男性型脱毛症)の研究が進む中で、他の理由があることがわかってきました。

男性ホルモンは5α−リダクターゼの作用によって活性型男性ホルモンに変化します。活性型男性ホルモンはTGF−βというヘアサイクルを早める物質を多く作らせます。そのためにヘアサイクルの成長期が短くなり、早く脱毛するようになります。

ヘアサイクルは成長期、退行期、休止期、脱毛・新生期を繰り返していますが、このうちの成長期は3〜5年となっています。その期間がシグナルTGF−βによって1年以下になってしまいます。それだけ脱毛が早くなり、成長が間に合わなくなって薄毛になっていくということです。

男性ホルモンによって薄毛になりやすいということと、男性ホルモンが精力を高めるということに直接的な関連はないとしても、結果として精力が強い人は薄毛になる確率が高いということはいえます。

薄毛と免疫の関係性ですが、男性ホルモンが薄毛に関係しているのと同じように、男性ホルモンが免疫に深く関係しています。その結論を組み合わせると、薄毛の人は免疫が低いということが言えます。

免疫は病原菌などの外敵と戦う機能だと一般に理解されているようですが、実際には「体にとって必要なものと不必要なものを判別して、不必要なものだけを攻撃する機能」を指しています。免疫力は、免疫の能力を指しています。

免疫の能力が高ければ、それだけウイルスや細菌に対抗することができるようになるわけですが、その働きを司っているのは免疫細胞です。免疫細胞には白血球とリンパ球があり、白血球には好中球、好酸球、マクロファージといった種類があります。

リンパ球はB細胞とT細胞があり、B細胞は外敵と戦う抗体を作り出し、T細胞は直接的に攻撃します。武器にたとえるならB細胞が作り出すのは砲弾で、T細胞はミサイルに相当します。

男性ホルモンが関係しているのはB細胞の働きで、男性ホルモンはB細胞が抗体を作る能力を低下させ、女性ホルモンはB細胞が抗体を作る能力を向上させます。外敵が体内に入ってくると先に小さな白血球の好中球などが働き、それで対応できないときには大きな白血球のマクロファージが働きます。

マクロファージは外敵と取り込んで処理していますが、どんな外敵を、どれくらい処理したかをサイトカインというサイン物質を放出してリンパ球に伝えます。そのサインを受けて、B細胞が抗体を作って対抗して、それでも処理しきれないときにはT細胞が登場します。

この一連の流れがあって免疫が保たれているわけですが、途中のB細胞による抗体による攻撃が、男性ホルモンによって抑えられると抗体の攻撃力の低下だけでなく、T細胞の攻撃力までが低下してしまうことになります。

もともと男性は、男性ホルモンによって女性よりも免疫が低いうえに、薄毛になるほど男性ホルモンが多いと、どうしても免疫が大きく低下することになってしまうのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

8月20日は「頭髪の日」という記念日です。

8月20日といえばお盆も過ぎて、暑さが和らいでくる時期ではあるものの、まだ紫外線は強く、毛髪が強い影響を受けている時期でもあります。夏場に毛髪が乾燥したり、舳先がパサつくのは気温のせいだけでなく、一番の要因は紫外線です。

紫外線のケアというと日焼け止めに使われているサンスクリーン剤は、日焼けや皮膚の光老化を防止するための紫外線散乱剤、紫外線吸収剤が使われています。

シミ、シワ、たるみの原因となるUVA(紫外線A波)を防ぐPAと、日焼けの原因となるUVB(紫外線B波)を防ぐSPFで、その強さが評価されています。

UVBは表皮だけに届き、UVAは真皮まで届きます。そのため、UVAを強く浴びると日焼けでは済まずに細胞が破壊されることもあります。

頭皮は皮膚で、顔の皮膚の延長と考えることができます。日差しが強いときには、毛髪では紫外線は防ぐことができず、頭皮の奥までが傷んで、そのために頭皮の血流や毛髪の育成にも影響を与えることになります。顔や腕などが日焼けをしたときには、頭皮も同様に日焼けをしていて、皮膚トラブルを起こしているのです。

毛髪が日焼けをしたときには、毛髪のタンパク質であるケラチンが壊れます。これがパサつきの原因となっています。同じだけの紫外線を浴びても、乾いた状態と濡れた状態では影響が異なります。プールなどで濡れた状態で紫外線を受けると、毛髪の中で酸化が起こり、毛髪の色素であるメラニンが分解されやすくなります。

この分解によって赤色化が起こります。プールに入ると消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムによって脱色が起こります。次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用もあるからですが、夏場のプールは、これに紫外線の影響もあって毛髪の脱色が起こりやすくなっているのです。

毛髪を黒色にしているのは内側にメラニンがあるためで、メラニンには紫外線を吸収する効果があります。しかし、毛髪の表面をウロコ型に覆っているキューティクルにはメラニンがありません。紫外線をカットすることができず、紫外線を直接に受けることでキューティクルが傷み、乾燥してパサつき、艶がなくなり、クシ通りも悪くなってしまいます。

日焼け止めというと一般には皮膚用、中でも顔の日焼けを防止するためという印象がありますが、毛髪のための日焼け止めもあります。一つはスプレー式で、外出前にスプレーをすることで毛髪をコーティングするものです。日焼け防止だけでなく、髪型をキープする作用もあるので、夏場のお出かけ前には毛髪全体にかけるようにします。

紫外線カット率は50%から限りなく100%に近い99.9%まで差があります。紫外線ダメージが気になる人は、できるだけ紫外線カット率が高いものを選ぶようにします。スプレー式の効果は2〜3時間ほどなので、長く外にいるときには2時間おきにはスプレーするようにします。

もう一つはトリートメント式で、UVカット効果があり、洗い流さないようにして毛髪を紫外線から守るものです。洗い流さないトリートメントのすべてに使われているわけではなくて、日焼け防止専用のトリートメントとなっています。

紫外線を受けるとキューティックルが傷むので、トリートメントが毛髪に残ることによって、よりダメージをケアすることができます。

毛髪は正常な状態ではアミノ酸のシスチンが結合しているのですが、紫外線を浴びた毛髪は酸化が進んでシステイン酸が発生します。こうなると元の状態に戻ることがなく、傷みやすくなります。紫外線を浴びれば毛髪は必ずダメージを受けるので、夏場だけでなく年間を通じて紫外線ケアはしたいものです。

というのは、紫外線が強い季節は日差しが強い7月、8月ではあるものの、紫外線は9月から10月までは多い日が続きます。多い日というのは晴天を指していますが、紫外線は曇り空でも容赦なく降り注いでいます。曇りでも晴天の50%ほどの紫外線量はあり、薄曇りでは80%ほどにもなっているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

薄毛は頭皮の皮脂が酸化して毛穴を詰まらせることが原因だという考えがあって、皮脂を増やさないこと、皮脂が詰まらないようにシャンプーとマッサージを欠かさないことがあげられています。

皮脂の酸化が毛髪に影響を与えるのは間違いないことではあっても、それと同じように注意しなければならないのが糖化です。

糖化というのは、食事で摂取した糖質(炭水化物)に含まれているブドウ糖が体内のタンパク質と結合することを指しています。糖化によって作られるのがAGEs(Advanced Glycation End products)で、終末糖化産物と呼ばれています。

AGEsは皮膚や血管を構成するタンパク質が糖化すると発生して、細胞の老化が起こります。それによって細胞の新陳代謝が遅くなり、毛髪の場合には抜けやすくなり、抜けたあとの再生が遅れて、徐々に薄毛の傾向になっていくのです。

ブドウ糖とタンパク質が結びつくことで代表的なのは、血液中のヘモグロビンA1cです。赤血球の中にはヘモグロビンという赤い色素があって、ヘモグロビンのタンパク質はブドウ糖と結びつきやすくなっています。

糖尿病の検査結果でよく出てくるヘモグロビンA1cはヘモグロビンが糖化したものです。ヘモグロビンA1cは2〜3か月かけて作られていくので、長期間の血糖値(血液中のブドウ糖の量)を知ることができます。

赤血球のヘモグロビンは酸素を結合させて全身に酸素を運ぶ役割をしていますが、ヘモグロビンA1cは酸素を結合させることはできても、酸素を離すことができないので、結果として酸素を運ぶ能力がないものです。

そのためにヘモグロビンA1cが増えると全身の細胞が取り込む酸素が減って、全身の細胞に影響を与えることになります。

毛髪は毛母細胞が活性化することで成長することができるわけで、毛母細胞に運ばれる酸素の量が減ったら正常に働くことができなくなります。これだけでも発毛に影響が出てしまいますが、酸素を取り込んで働く毛母細胞のほうが糖化したら、さらに悪影響が出ることになります。

赤血球は作られてから役目を終えて壊れるまでの期間が4か月ほどとなっています。そのために一時的にヘモグロビンA1cが増えても期間を経ることで減らすことができます。ところが、体を構成する細胞が長期間にわたって糖化されると劣化して元には戻らなくなります。この劣化したものがAGEsです。

血管が糖化すると弾力が失われて、血流が低下するようになります。頭皮に弾力性があるのはコラーゲンや弾性繊維といったタンパク質で、このタンパク質がAGEsによって糖化が進んだ状態になると、ますます血流が低下して、毛髪も生えにくくなるのです。

育毛に影響が出るだけでなく、栄養成分が不足すると白髪にもなりやすくなります。血管の糖化によって全身の血流が悪くなると肝臓などの内臓にも影響が出ます。肝臓ではアミノ酸から体に必要なタンパク質を作り出しているので、肝機能の低下は毛髪の状態も含めて全身の健康に影響を与えることになるのです。

糖化によって作られたAGEsは、もともと体にあったものではない有害物で、これを免疫細胞の白血球は外敵とみなして攻撃を始めます。攻撃するときに生理活性物質のサイトカインが作られます。

サイトカインは過剰に発生すると全身の細胞に慢性的な炎症を引き起こします。頭皮の細胞に炎症が起こると発毛にも影響が現れます。糖化は複数の理由で脱毛を起こす要因となっているのです。

AGEsは毛髪そのものにも影響を与えます。毛髪の主な成分はケラチンで、18種類のアミノ酸が結合して作られたタンパク質です。タンパク質であるので、当然のように糖化の影響を受けることになります。本人は糖化の影響を受けていないつもりでも、案外と多くの人の毛髪が部分的であっても糖化しています。

毛髪の検査するときには3分類して基部、中部、先端部と分けています。根元の基部は5〜10cmで、中部と先端部は半分ずつほどになっていますが、それぞれのAGEsの量を測定すると先端部、中部、基部の順にAGEsが多くなっています。

毛髪は先端部に行くほど傷みが多くなり、これは先に発毛した部分が早く老化しやすいからだと考えられていましたが、AGEsのことがわかると糖化の影響を受けていることが毛髪の傷みに関係していることが理解できるようになるかと思います。

糖化を起こす要因はブドウ糖の過剰摂取です。ブドウ糖は食品の糖質に多く含まれていて、特に多いのは砂糖です。砂糖はブドウ糖1分子と果糖1分子で構成されています。甘いものを食べると一時的に血液中のブドウ糖が増えて、糖化が進みやすくなります。

通常はブドウ糖は全身の細胞でエネルギー源として最優先で取り込まれるので、長く血液中に濃い状態で止まることはありません。

しかし、糖尿病の人はブドウ糖を取り込む能力が低くなっているので、どうしても血液中のブドウ糖が多くなります。甘いものが好きであったり、太っていて糖尿病の可能性が高い人は、糖化が進みやすくなっているのでブドウ糖の取りすぎには注意が必要です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

「鉄分の日」ゼリア新薬が鉄分の重要性と不足の問題点を啓発するために、いい(11)と鉄分の元素番号26にちなんで制定。

「いい風呂の日」日本浴用剤工業会が、いい(11)風呂(26)の語呂合わせで制定。

「ポリフェノールの日」日本ポリフェノール学会が、いい(11)ポリフェ(2)ノール(6)の語呂合わせで制定。

「いいプルーンの日」カリフォルニア プルーン協会が毎月26日がプルーンの日であることと、11月がいい(11)プ(2)ルーン(6)の語呂合わせで制定。

「いいブロッコリーの日」安井ファーム(石川県白山市)が、いい(11)ブロ(26)ッコリーの語呂合わせで制定。

「ビン牛乳の日」山村乳業(三重県伊勢市)が2本のビン牛乳(11)が風呂(26)に寄り添うように並んで見えることから制定。

毎月26日:「風呂の日」(東京ガス)、「プルーンの日」(サンスウィート・インターナショナル日本支社)

日本の栄養学は、明治時代から始まっていたものの、国民の健康づくりの基本として据えられたのは終戦後のことです。それは終戦から2年後の1947年(昭和22年)からとされています。

戦後の日本は極端な食糧難の状態でした。その原因としては戦争の徴用と軍需産業への動員のために農村労働力が減少したこと、農機具や肥料が欠乏状態だったことに加えて、異常気象によって米の生産量が平年の半分以下という不作であったことがあげられています。

このような時代背景であったことから、日本の栄養学は栄養不足による健康状態の悪化を改善することから始まりました。このときの栄養学は国民全体の栄養状態を良くすることが重視されたことから、のちに「公衆栄養学」と呼ばれました。

その当時の平均寿命をみてみると、1947年には男性が50.06歳、女性が53.96歳でした。現在(2024年)では男性が81.09歳、女性が87.14歳となっているので、男性は31.03年、女性は33.18年も平均寿命が延びています。

これには栄養摂取の向上が大きな影響を与えました。1946年(昭和21年)の摂取エネルギー量(男女平均)は1903kcalでしたが、1955年(昭和30年)には2104kcalとなり、翌年に発表された『経済白書』では、戦前の最高水準を上回る回復を遂げたことから、「もはや戦後ではない」と宣言されました。

1975年(昭和50年)には摂取エネルギー量は2226kcalと、現在と比較しても最高レベルに達しました。その一方で、過剰摂取による生活習慣病の患者は増え続け、食事の関心も飽食の時代に対応する内容へと変化しました。

ただ食べ過ぎを抑えることだけでなく、性別、年齢、活動などに合わせて、個別に対応することが重視されるようになりました。2008年にはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に対応する特定健診・特定保健指導が始まりました。この個人対応の栄養学は「人間栄養学」と呼ばれました。

高齢化が進むにつれて、生活習慣病予防だけでなく、足腰の健康の増進も重視されて、フレイル予防のための栄養学も注目されるようになりました。フレイルは健康と要介護状態の中間の状態を指していて、予備能力低下によって身体機能障害に陥りやすい状態で、2014年に日本老年医学会から学術用語として提唱されました。

これに対応する予防対策としての栄養学は「予防栄養学」と呼ばれ、身体の状態と疾患の悪化をともに予防するということで、これは私が学んできた“臨床栄養”の範疇といえます。

ここまでは医師が大学で学ぶことができる内容ですが、今ではより健康になり、身体機能と脳機能を含めた機能向上を目指した栄養学が重視されるようになりました。

これは「発達栄養学」と呼ばれ、性別、年齢、活動量(運動、日常活動)だけでなく、個々の身体の成長や発達に応じた能力を発揮させる栄養学となっています。

発達栄養学については次回(日々修行89)に詳しく説明します。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、エネルギーの指標と栄養素の指標を設定しています。

〔エネルギーの指標〕
エネルギーについては、エネルギー摂取量の過不足の回避を目的とする指標を設定するとしています。
〔栄養素の指標〕

栄養素の指標は、3つの目的からなる5つの指標で構成されます。

具体的には、摂取不足の回避を目的とする3種類の指標、過剰摂取による健康障害の回避を目的とする指標、生活習慣病の発症予防を目的とする指標から構成されます。

なお、食事摂取基準で扱う生活習慣病は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病を基本としていますが、我が国において大きな健康課題であり、栄養素との関連が明らかであるとともに栄養疫学的に十分な科学的根拠が存在する場合には、その他の疾患も適宜含めることとしています。

また、脳血管疾患と虚血性心疾患は、生活習慣病の重症化に伴って生じるものと考え、重症化予防の観点から扱うこととしています。

栄養不足の回避を目的として、「推定平均必要量」が設定されています。推定平均必要量は、半数の者が必要量を満たす量のことです。推定平均必要量を補助する目的で「推奨量」を設定していて、これはほとんどの者が充足している量を指しています。

十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安量」が設定されています。目安量は、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどありません。

過剰摂取による健康障害の回避を目的として「耐容上限値」が設定されていますが、十分な科学的根拠が得られない栄養素については設定されていません。

その一方で、生活習慣病の発症予防を目的として食事摂取基準を設定する必要のない栄養素が存在しています。しかしながら、そのための方法論に関する議論は十分とは言えません。そこで、これらの栄養素に関しては、「生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」として「目標量」が設定されています。

なお、生活習慣病の重症化予防、フレイル予防を目的として摂取量の基準を設定できる栄養素については、発症予防を目的とした量(目標量)とは区別して示されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕