「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食事調査の測定誤差を説明しています。
食事調査法には複数の種類があることが知られていますが、その多くが対象者による自己申告に基づいて情報を収集するものです。その場合、申告誤差は避けられません。
最も重要な申告誤差として、過小申告・過大申告が知られています。そのうち。出現頻度が高いのは過小申告であり、その中でも特に留意を要するものはエネルギー摂取量の過小申告です。
調査法や対象者によって、その程度は異なるものの、エネルギー摂取量については、日本人でも集団平均値として男性11%程度、女性15%程度の過小申告が存在することが方谷されています。
この研究では、16日間の秤量食事記録法によって得られたエネルギー摂取量を、性・年齢区分から推定した基礎代謝量と比較しています。また、平成30年・令和元年国民健康・栄養調査(案分法による1日間食事記録法)によって得られた平均エネルギー摂取量と推定エネルギー必要量(身体活動レベル「ふつう」)を年齢区分ごとに比較しています。
対象者個人ごとの推定エネルギー必要量との比較ではないために解釈には注意を要するものの、幼児期における過大申告と小児期から成人期における過小申告の可能性が読み取れます。平成24年国民健康・栄養調査のデータを用いた研究でも類似の結果が得られています。
さらに、過小申告・過大申告の程度は肥満度の影響を強く受けることが知られており、エネルギーについての詳細は、エネルギーの章の参照を求めています。
栄養素についていえば、例えば、24時間尿中排泄量から推定した窒素(たんぱく質摂取量の生体指標)、カリウム、ナトリウムの摂取量を比較基準として申告された摂取量との関係を肥満度(この研究ではBMI)別に検討した研究が日本人若年女性で存在しますが、3種類すべての栄養素においてBMIが低い群で過大申告の傾向、BMIが高い群で過小申告の傾向でした。
日本人の小児や妊婦でも肥満度と自己申告によるエネルギー摂取量の間に負の相関が観察されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕