「肝臓のためには休肝日を設けることが大切」だということが言われています。1週間に、どれくらい“飲まない日”があれば肝臓の健康が保たれるのかというと、よく言われるのは週に2日です。
これはアルコール健康医学協会も示していますが、想定されているのは週に2回、1日ずつの禁酒です。5日間飲み続けて、2日休むというのは、休肝日の回数としては合っていても、このことをすすめているわけではありません。
2日の休肝日で実際に効果があるのかということですが、多くの研究の成果をまとめると「週に3〜6日の休肝日を設けることで、休肝日が0〜2日しか設けない場合よりも総死亡率が低下する」ということです。
端的に言うと、週に1〜4回の飲酒習慣は5〜7回の飲酒習慣よりも健康面でよいということですが、これを見たら「それはそうだろう!」というような感想を抱く人がほとんどでしょう。
飲む回数は、どこで線引きをするかということですが、アルコールの影響は個人差が大きくて、しかも“酒に強い”人でも肝臓の機能が高いとは言えません。アルコールの分解に関係する肝臓の酵素はアルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素です。
アルコール脱水素酵素は、アルコールを分解してアセトアルデヒドに変える酵素です。アルデヒド脱水素酵素はアセトアルデヒドを分解して、酢酸を経て、水と二酸化炭素に変化させます。
アセトアルデヒドは有害性が強くて、飲酒をしたときの不快な症状(顔面や体の紅潮、頭痛、吐き気、頻脈など)はアセトアルデヒドの作用によるものです。
日本人はアルコール脱水素酵素の働きは世界と比べて特に弱いわけではないのですが、アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、悪酔いしやすくなっています。これは日本人が強いアルコールを歴史的に飲んでこなかったことが理由の一つとしてあげられます。
さまざまな働きをしている肝臓には数多くの酵素があって、その数は2000種類以上とされています。そのうち全部の酵素の働きがよいということは少ないと思いますが、酒に強い人は、ひょっとするとアルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素が強いだけかもしれません。
酒に強いからといって、肝臓の働きが強いとは限りません。飲んでも酔うことが少ない人であっても、他の臓器や器官は影響を受けているかもしれません。アルコールは膵炎、糖尿病、心疾患、高血圧、胃腸障害、がんにも影響を与え、脳にも影響していて睡眠障害、うつ病になる場合も指摘されています。
そのような指導を患者にしている医師が、自分が飲むとなると大丈夫かと思うようなことがあり、それが医学系の学会(大会)の後の飲酒で多いことが気づいてから、そういった席には近づかないようにしていました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕