体が冷えやすい人は血液の温度が低いことが想像されることもあるのですが、実際には血液の温度はほとんど変わりません。
日本人の血液温度は37〜38℃で、血液温度を高めているのは筋肉をはじめとした全身の細胞で発生している熱です。この温かい血液が全身を巡って、皮膚から放熱をされて体温(皮膚温)は36〜37℃になっています。
欧米人は血液温度が高めで、体温も高めになっているので、日本人なら長袖の上着1枚では少し寒く感じるようなときでも、平気で半袖で過ごせるという違いがあります。
その血液温度は38〜39℃と1℃ほどの違いでしかありませんが、この差が、日本人は霧雨を寒いと感じるのに欧米人は涼しくて気持ちがいいという反応の違いになっています。
血液を温める細胞での発熱の元となっているのは食事で摂ったエネルギー源の糖質や脂質で、これを材料にして細胞の中のミトコンドリアという小器官でエネルギーが作られています。
1日に作られるエネルギーのうち約70%は基礎代謝といって、生命を維持するために使われています。その基礎代謝のうちの約70%は体熱となっています。つまり、1日のエネルギーの約半分(70%×70%=49%)は体を温めるために使われているわけです。
欧米人は肉食が多くなっていて、肉に多く含まれる脂肪はエネルギー量が高くて、1gあたり約9kcalとなっています。これに対して糖質は約4kcalなので、脂肪を多く摂るほどエネルギー源の量が多くなり、それだけ細胞の中で作り出される熱量も多くなるわけです。
血液が温まるほど、血液中の脂肪が溶けやすくなって流れやすくなります。日本人は血液の温度が低くて、脂肪が多くなるとドロドロ状態になって血流が低下しやすいという特徴があります。
そのために血液の温度が低くなると全身の血流が低下しやすくなり、末端の血管ほど流れが悪くなります。頭皮の血管は極めて細い毛細血管なので、血液温度が低いほど流れが悪くなって、毛髪を成長させている毛母細胞に運ばれる育毛に必要な栄養成分も送られにくくなって、抜け毛にもつながりやすいということがいえます。
体が冷える人は手足の先が特に冷えやすくなっています。これは温かい血液が先端まで充分に運ばれていないために起こることです。手足が冷えるということは、他の末端の血流も悪くなっているということで、頭皮の血行も悪くなってしまいます。
血流を盛んにする方法としては、運動や入浴、口から入れるものでは香辛料や根菜類なども知られていますが、もう一つ血流をよくするものとして、よく例に出されるのは飲酒です。お酒を飲んだときには体温が上昇します。
そのために飲酒は毛髪によい影響を与えるのではないかという考えがある一方で、飲酒が薄毛の原因になっているという指摘もあります。どちらが本当なのかというのは酒好きの人だけでなく、誰もが気になることかと思います。
飲酒をすると体温が上昇しますが、その理由の一つはアルコールのエネルギー量です。1gあたりでは約7kcalとなっています。脂肪に匹敵するようなエネルギー量ですが、これは純粋なアルコール(100%)の場合で、実際には日本酒で15%、ビールで5%くらいなので、それだけ低くなっています。
とはいっても、飲みすぎれば多くのエネルギー量を摂ることになるわけですが、飲酒後の体温の上昇に多くのエネルギーが使われるので、アルコール飲料だけでは太るようなことはないわけです。飲酒で太るのは、一緒に食べるほうのエネルギー量に原因があります。
適度な飲酒量なら、血管はゆるんで血流がよくなり、血圧も適度に上昇するだけです。適度な量というのは日本酒換算で一合の量となり、ほろ酔い程度で止めておくのが最もよい飲み方といえます。
飲酒と薄毛の関係については、実は臨床的な結果は得られていません。それなのに飲酒で薄毛になると言われるのは、肥満の人に薄毛の傾向があるからです。脂肪細胞の中に蓄積される体脂肪が増えすぎるほどの飲酒は、体温を低下させて、末端の血流を低下させます。
というのは、脂肪細胞にも血管が通っていて、体脂肪が増えるほど脂肪細胞に送られる血液量が増えるために、末端に送られる血液量が減るからです。
肝臓には脂肪合成酵素があって、この酵素はアルコールによって活性化します。ということは、飲酒をすると肝臓で合成される脂肪が増えて、脂肪細胞に蓄積される脂肪が増えていくことになり、これが肥満による薄毛につながっていくことになるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕