筋肉を強化する運動というと白筋を刺激する無酸素運動という印象があるのですが、赤筋を刺激する有酸素運動によっても筋肉を強化することができます。ただし、一般に有酸素運動とされるウォーキングやジョギング、エクササイズなどを漫然とやっていても、その効果はなかなか高まってくれません。
筋肉を強化するためには、身体に強めの負荷がかかることが重要ですが、歩くだけでも筋肉を強化することができます。そのメカニズムについて、紹介していきます。
有酸素運動は、酸素を取り込みながらエネルギー代謝を盛んにしていく運動です。細胞内のエネルギー産生器官のミトコンドリアのTCA回路では酸素を用いて、ブドウ糖や脂肪酸をエネルギー源として代謝が行われています。
TCA回路でブドウ糖と脂肪酸を代謝した結果として、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られます。ATPからリン酸が1個外れてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。身体に負荷が高まるウォーキングをするとADPから、さらにリン酸が1個外れてAMP(アデノシン一リン酸)になりますが、そのときにAMPキナーゼという酵素が発生します。
AMPキナーゼには、細胞にブドウ糖を取り込む働きをするGLUT4(グルコース輸送体)が細胞膜に移動して、ブドウ糖を効果的に取り込ませる働きがあります。これによって多くのエネルギーが発生するようになります。
通常はGLUT4を移動させて、ブドウ糖を細胞に取り込む働きをさせているのは、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンです。インスリンが不足すると全身の細胞へのブドウ糖の取り込みが低下して、血糖値(血液中のブドウ糖の値)が下がりにくくなります。
ところが、有酸素運動をすると、このメカニズムによって血糖値が降下します。血糖値が降下すると、肝臓で脂肪合成するインスリンの分泌量が減少するために血液中の中性脂肪の減少にもつながります。糖尿病になると、食事療法とともに運動療法が指導されますが、これは運動によってAMPキナーゼを多く発生させて、インスリンが不足した状態でも血糖値が下げられるようにするという意味もあるのです。
それと同じ結果が得られるのは、最大酸素摂取量(全力運動)の60〜70%の強度の運動をしたときです。体力があり、負荷が高まっても耐えられる人の場合には、かなりの運動が必要になります。ところが、体力が低下してきた人の場合には、それほど負荷がかかる運動でなくてもAMPキナーゼを多く発生します。その最大酸素摂取量の60〜70%は早歩きのレベルの運動量なのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)