論理的矛盾「カルシウム・パラドックス」の理由
カルシウムについて書かれた書籍をみると、いまだに「カルシウムの過剰摂取は尿路結石や腎臓結石などの泌尿器系結石を起こす」と書かれているものがあります。
しかし、カルシウムを多く摂取する人は、むしろ結石が少ないことが知られており、血管にカルシウムが付着する石灰化も少なくなっています。そして、逆にカルシウムの摂取が少ない人のほうが結石などになる危険性が高くなっています。
このような常識的と考えられることと逆のことが起こることはパラドックス(Paradox)といい、カルシウムの摂取と発症の関係は、カルシウム・パラドックスと呼ばれています。
普通に考えると論理的矛盾のように感じるかもしれませんが、骨とカルシウムの関係を見ていくと、その理由がわかります。
体内のカルシウムの約99%は骨や歯に存在しています。残りの1%ほどは血液や細胞内にあります。血液中のカルシウムが不足すると、骨の中のカルシウムを溶かして、血液中の濃度を保つ仕組みになっています。
ところが、長期的にカルシウムが不足していると、骨から溶け出す量が増え、特に不足したときには多くの量が短期間に溶け出して、血液中のカルシウムが濃くなりすぎることになります。その濃くなったカルシウムが結石などを作る原因となります。結石は、リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどが主な材料となっています。
血液中のカルシウムが多ければ、リン酸やシュウ酸とすぐに結びついて、リン酸カルシウムやシュウ酸カルシウムの小さな塊ができた段階で、排泄されるので、結石まで進むことはありません。
ところが、血液中のカルシウムが少ない状態ではリン酸とシュウ酸が濃くなっていますが、そのときにカルシウムが多い食事をしたり、骨からのカルシウムの溶け出しが多くなって一時的に血液中のカルシウムが多くなりすぎると大きなリン酸カルシウムやシュウ酸カルシウムができることになります。それが核になって、結石が作られていくことになるのです。