033 脂肪は燃焼しているわけではない

体脂肪の減少というと“燃焼”という言葉がよく使われます。正式な用語としてエネルギー代謝となるのですが、わかりやすくするために一般向けには“燃焼”で表現することもあります。植物油に火をつけると燃えて、徐々に減っていくことから、これをイメージして「脂肪が燃焼する」という言い方がされますが、実際には体内で脂肪は燃焼していません。
脂肪の構成成分の脂肪酸は細胞のミトコンドリアに取り込まれるときにはL‐カルニチンと結びつく必要があり、L‐カルニチンが不足しているとエネルギー源をエネルギーに変化させるための第一段階で停滞が起こります。ミトコンドリアの中では脂肪酸はピルビン酸、アセチルCoAに変化して、ミトコンドリア内のTCA回路でクエン酸となって、そのあと次々に別の酸に変化して一周してクエン酸に戻ります。この変化では電子の受け渡しが行われて、ADP(アデノシン二リン酸)にリン酸が1個加わってATP(アデノシン三リン酸)となります。このATPがエネルギー物質です。
エネルギーの発生には脂肪が燃焼しているわけではなくて、ADPからATPになるときにエネルギーが蓄積され、ATPからADPになるときにエネルギーが放出されています。このエネルギーが細胞を働かせる原動力となるわけです。このエネルギー代謝によって発生したエネルギーの70%ほどは体温を上昇させるために使われているので、代謝が進むほど身体が熱くなっていくので、燃焼したようなイメージになっているということです。