日本人は、ご飯があれば、いろいろなおかずを食べることができます。ご飯さえあれば世界中の料理も食べられます。これはご飯によって好みの味わいに変えられるからです。ご飯には微妙な味はあっても、ほとんど味がないとの同じです。これに対してパンも麺類も味がついています。主食に味があると、すべての料理と合わせるわけにはいかなくなります。ご飯に合うおかずをパンで食べるのは厳しいというものもあります。「そんなことはない」と反発する人に、塩辛とパンを食べてもらったことがありますが、両方とも好きなのに食べられなかったという反応でした。
アジア大陸でもご飯を食べています。しかし、大陸は硬水地域なので、日本のように炊くということが基本的にできません。硬水で炊くと水が充分に浸透しなくて芯が残ってしまいます。そこで煮る、蒸す、炒めるという料理法になります。今では炊飯器の性能が向上して硬水でも芯が残りにくくなりましたが、それでも硬水で日本のようなふっくらと美味しいご飯にはなりません。おかゆは米を煮たもので、白米は味付けなしでも食べられるのに、おかゆは味付けがないと食べられません。蒸すのも炒めるのも味付けが必要です。そのためにおかずの種類も限られてきます。
日本の水は軟水で、米に浸透しやすいので普通に炊いても美味しくなります。炊くというのは煮て、蒸して、焦がすという過程で、炊飯器で焦げることはなくなったものの、釜で炊くとおこげができます。この香ばしさがあれば塩も味噌もなしのおにぎりでも美味しく食べられます。
日本人の口中調味は軟水で米を炊くことが可能であったことから生まれた、環境が与えてくれた健康の恵みであったと言うことができます。
硬水と軟水の違いですが、水に含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンが多く、1000ml(1ℓ)中に120mg以上のものが硬水です。ヨーロッパの水はミネラルウォーターだけでなく、水道水も硬水です。国土が広く、雨の量が少ない地域は、地面に染み込んだ水が湧き出てくるまでに長い期間がかかり、その間に水の中にカルシウムとマグネシウムが多く含まれるようになります。カルシウムとマグネシウムは腸壁を刺激するため、硬水を飲むと便通がよくなる人がいる一方で、下痢になる人もいます。
水に含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンが少なく、1000ml(1ℓ)中に120mg未満のものが軟水です。日本は火山国であるためにカルシウムとマグネシウムが少ない土壌であるうえに、国土が狭く、雨の量が多いために、地下水が湧き出るまでの期間が短く、水に含まれるカルシウムとマグネシウムが少なくなっています。ヨーロッパでは国土が狭く、雨が多いイギリスは例外的に軟水となっています。