糖尿病の人の中には、甘いものと並んで、お酒を飲みたがる人も少なくありません。糖尿病患者に「どれくらいお菓子を食べてよいか」と聞かれることがありますが、その答えは「食べてはいけません」です。お菓子を食べると血糖値が上昇するだけでなく、全体的な摂取エネルギー量が増えるからです。お酒の場合は、飲んではいけないではなくて、飲む量が制限されます。
血糖は血液中のブドウ糖のことであるので、ブドウ糖が多く含まれるものを食べると糖尿病になると単純に考えがちですが、全体的な摂取エネルギー量が重要で、中でもエネルギー量が高い脂肪の摂りすぎが大きく関係しています。血糖値を下げる作用があるインスリンは、ブドウ糖の量に反応して分泌されますが、インスリンは余分となったブドウ糖を脂肪酸に合成させるためにも、脂肪酸が結合した中性脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させるためにも使われます。脂肪を多く摂って、インスリンが多く必要になると、それだけインスリンを分泌する膵臓に負担がかかり、膵臓が限界に達するとインスリンが急に分泌されにくくなります。糖尿病はブドウ糖が含まれる食品の食べすぎだけで怒るわけではないのです。
エネルギー量の高さが糖尿病の原因であるということで気になるアルコールのエネルギー量ですが、1gあたりが約7kcalと、脂肪の9kcalと糖の約4kcalの中間的な量となっています。糖尿病でも飲酒が許可されるための条件があり、①血糖値が高くなりすぎずに安定していること、②合併症がないこと、③決められた飲酒量が守れること、④飲酒時に食べすぎないことで、これで許可されるのが週に1〜2回の飲酒です。もちろん、飲酒した分のエネルギー量の分だけ、主食のエネルギー量を減らす、つまり、ご飯の量を減らすことが求められます。