脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が不足するようなことは避けなければなりませんが、ではブドウ糖が血液中に多い高血糖状態を保てば脳細胞にブドウ糖が多く取り込まれるのかというと、そう簡単なことではありません。血糖値が高すぎる期間が長く続くと糖尿病になる恐れがあり、糖尿病になると全身の細胞へのブドウ糖の取り込みが不足し、中でも脳細胞がブドウ糖不足に陥りかねません。
糖尿病は遺伝的に糖尿病の因子を持っている人がなる疾患です。その因子がなければ血糖値が高くなっても糖尿病にならないことになるわけですが、残念ながら日本人は因子を持った人が非常に多く、血糖値が高い状態が続くと高確率で発症します。そのため、国民健康・栄養調査では約1000万人が糖尿病、約1000万人が糖尿病予備群であり、成人の5人に1人が該当するという結果となっています。
血糖値が高い期間が2〜3か月継続するとヘモグロビン(Hb)A1cの値が高くなります。ヘモグロビンは赤血球の色素で、そのタンパク質がブドウ糖と結びつくことで発生します。HbA1c値が高いということは、それだけ高血糖状態が長く続いていたことを示しています。
高血糖状態が長く続くと、ブドウ糖を細胞に取り込ませるために必要なインスリンが膵臓から多く分泌されます。膵臓は血糖値が高い間はインスリンを分泌させ続けますが、働きすぎで疲弊してくると多く分泌させることができなくなります。このようにインスリンの分泌量が減ることによって細胞がブドウ糖を充分に取り込めなくなり、血糖値が高いままになり、HbA1c値も高くなります。つまり、HbA1c値が高いということは、糖質の摂りすぎよりも、血液中のブドウ糖を細胞が充分に取り込まれていない結果で、細胞にとっては栄養の枯渇状態ということです。