有酸素運動をすると細胞でエネルギー代謝を行っているミトコンドリアが増える、と一般には説明されています。しかし、実際にはミトコンドリアの数が増えているわけではなく、ミトコンドリアのサイズが大きくなって、エネルギーを作り出す能力が高まっていきます。ミトコンドリアは細胞によって100〜3000個と数に違いがあって、筋肉には多くのミトコンドリアが存在しています。筋肉は運動によって強く刺激されるので、増えやすくなっています。
運動をするとミトコンドリア内で産生されたATP(アデノシン三リン酸)が使われて筋肉が動かされているわけですが、ATPのリン酸が一つ離れることによってADP(アデノシン二リン酸)となるときにエネルギーが発生します。運動によってエネルギーを使い続けると、ADPからさらにリン酸が一つ離れたAMP(アデノシン一リン酸)が増えていきます。AMPが増えると身体はエネルギー不足の飢餓状態であることを察知して、筋肉に多く存在しているAMPキナーゼという酵素が活性化されます。この酵素はAMPによって活性化される蛋白リン酸化酵素であることからAMP活性化プロテインキナーゼとも呼ばれています。
AMPキナーゼが活性化されて働くとPGC1aというタンパク質をさらに活性化させていくのですが、PGC1aにはミトコンドリアの合成を促進するための指令が核内遺伝子に与えられます。指令を受けるとミトコンドリアの合成のために必要な核内遺伝子が働き、ミトコンドリアを構成するタンパク質の成分が細胞質で作られます。その結果として、すでに存在しているミトコンドリアに構成成分が付け足されてミトコンドリアの体積が増えていくことになります。