筋肉に多く存在しているAMPキナーゼという酵素にはブドウ糖の代謝を促進させて、血糖値を下げる働きがあることが知られています。内臓脂肪には生理活性物質のアディポネクチンを分泌する作用があり、アディポネクチンは血液によって筋肉細胞まで運ばれ、AMPキナーゼを活性化しています。これによってAMPキナーゼは細胞膜に存在するグルコース輸送体のGLUT4に信号を出して、ブドウ糖(グルコース)を血液中から細胞に取り込むように指令が出されます。
GLUT4は細胞の中にあって通常は奥にあり、指令を受けると細胞膜の近くまで移動してきてブドウ糖を取り込むようになります。このブドウ糖はミトコンドリアに取り込まれて、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出し、エネルギーを発生させることになります。
内臓脂肪に中性脂肪が多く蓄積されるとアディポネクチンの分泌量が大きく低下します、これが継続的に起こるとブドウ糖の消費が低下して、糖尿病を発症させることにもなります。AMPキナーゼは運動によって活性化され、運動をするとGLUT4が細胞膜の近くに移動してブドウ糖の取り込みが促進され、血糖値の上昇が抑えられるようになります。AMPキナーゼが活性化されるとミトコンドリアのエネルギー産生が高まっていくことから、運動はブドウ糖の代謝とともに脂質の代謝も促進して、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低LDLコレステロール血症)、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病の対策としても効果が出ることになるわけです。