215 エネルギー産生を高める運動法

運動は無酸素運動と有酸素運動に大きく分けられます。エネルギー産生を行っている細胞内のミトコンドリアの能力を高めるのはAMPキナーゼという酵素が働きやすくなる有酸素運動で、ウォーキングなどを長く続けるか早歩きをしてエネルギー不足状態を起こすと、ミトコンドリアが活性化され、ブドウ糖と脂肪酸の代謝が進んでいきます。有酸素運動は定期的に実施することが大切で、有酸素運動をやらない期間が長くなるとミトコンドリアの体積が減少して、エネルギー産生も低下することが知られています。
ミトコンドリアの体積は加齢によって減少していき、年齢を重ねるほどミトコンドリアの能力が低下していくことになります。年齢を重ねるほど代謝が低下する大きな要因であって、中高年や高齢者はミトコンドリアのエネルギー産生の能力が低下することから、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が充分に産生されなくなり、これが老化を進める要因となります。そのため、年齢を重ねるほど有酸素運動が重要となるわけです。
無酸素運動もAMPキナーゼの働きによってエネルギー産生が高まることが確認されています。無酸素運動は息を止めても行える筋肉トレーニングや短距離走などを一般に指していますが、本来なら有酸素運動であるジョギングも身体的な負荷が高まると無酸素領域の運動になります。有酸素運動によってミトコンドリア内でATPが多く産生されるのに対して、無酸素運動ではATPが消費されます。無酸素運動によってATPが消費されて、リン酸が一つ離れたADP(アデノシン二リン酸)、さらにリン酸が二つ離れたAMP(アデノシン一リン酸)が増えることによって細胞内のエネルギーのレベルが低下していきます。
こうなるとエネルギー不足のサインを細胞内のエネルギーセンサーであるAMPキナーゼが察知して、ミトコンドリアでの脂肪代謝能力が高まることになります。この状態で有酸素運動を行うとATPが多く作り出されるようになることから、体脂肪を効果的に減らすためには無酸素運動と有酸素運動を交互に行えばよいことになります。