223 なぜわかりにくい80kcal栄養学が続いているのか

栄養学のエネルギー源の計算の基本単位は80kcal(キロカロリー)となっています。これを1単位として、1日に何単位を摂取すればよいかが計算されています。1日に1600kcalの摂取エネルギーとすると、200単位を摂ればよいとされます。なんとなくわかりにくく感じるのは、80という使い慣れていない数字が出てきているからです。慣れているのは十進法で、100kcalが1単位なら理解しやすいはずです。100kcalなら単位という考えをする必要もありません。単位という考えが出てきたのは80kcalが計算しにくいからです。
日本の栄養学が始まった明治時代は100kcalが基本的な考え方でした。軍医であった森林太郎(文豪の森鴎外)がドイツで学んできた栄養学は食品を100kcal単位として、役割や身体の負担などに合わせて100kcal単位で増減して、1日の摂取エネルギー量が決められていました。日本初の栄養専門学校を設立した佐伯矩医学博士は内務省栄養研究所(現在の国立健康・栄養研究所の前身)の初代所長ですが、このときに採用されたのも100kcalでした。病院の栄養学も100kcalを基本としていましたが、終戦後に大転換を迎えます。
終戦後の食糧難、農作物や畜産物などの生育不足から食事として皿に乗る食品の分量が減り、これまで1食分が100kcalほどであったのが80kcalほどに減りました。そこで戦後の緊急避難的な措置として80kcalが栄養・食糧学会で提案され、これを採用したのが日本糖尿病学会と栄養関連の大学でした。そこから治療食は80kcalが基本となったのですが、緊急避難的な措置であったはずなのに今でも基本中の基本として使われています。
日本メディカルダイエット支援機構では100kcalを基本として栄養指導をしていた先生方と研究を進めてきたことから、メディカルダイエットの教育でも情報発信でも100kcal単位で自分が食べるべき量を考える100kcal栄養学に基づいて実施しています。