DNA Answer21 食事の文化性

食文化という言葉があるように、食事には文化性が求められます。それは伝統的な和食などだけでなく、日常的な食事であっても文化性は重要項目です。文化性を無視した食事は、たとえ健康目的であったとしても提供すべきものではありません。

私の臨床栄養の師匠である山本辰芳先生(管理栄養士)は大規模な国立病院の栄養管理責任者であるとともに、病院栄養士団体のトップとして、また臨床医と病院栄養士の臨床栄養団体のトップとしても活躍された重鎮です。

医療機関における栄養指導は管理栄養士が実施しなければ保険点数がつかない医療制度となっていますが、それを国に働きかけて実現させたのは山本先生の最大の功績とされています。そのときには日本栄養士会の理事長も務められていました。

退官後に山本先生は民間の研究所(病院栄養管理研究所:通称HDS研究所)を設立して、私は主任研究員として支えてきました。そのときにはモットーとして掲げていたのは山本先生が現役時代から訴えていた病院給食の三大原則でした。

それは①正しい食事療法の実践、②食事の量と質の充足、③食事の文化性で、「文化性のない食事はエサである」という標語を張り出していた栄養管理室もありました。

文化性の基本は、美味しく食べることができる料理であって、食事時間(食事を始める時間、食事をしている時間)、食事の環境、食事の温度(温かいものは温かく、冷たいものは冷たいままに)など、集団の食事では疎かになりやすいことも、できるだけ個人の食事と同じように提供することに重きを置いていました。

文化性は発達栄養においても重要事項です。発達障害児は特性から極端な偏食になりやすく、食べられない、食べにくいという状況を放置するのではなく、通常の食事として、美味しく食べられるようにする工夫が求められます。

とはいっても、それが難しいことはDNA認定講習で発達障害児の特性を学ぶほどにわかってきます。しかし、それを解決する方法を伝えられるように、DNAを支える活動、発達障害児や保護者が求める食事を提供できるようにするバックアップ体制を充実させることに取り組んでいます。
〔発達栄養指南:小林正人〕