発達障害児に特徴的な極端な偏食は、自閉症スペクトラム障害にも注意欠陥・多動性障害にもみられることですが、その割合となると大きな違いがあって、圧倒的に自閉症スペクトラム障害のほうが多くなっています。
それは自閉症スペクトラム障害に感覚過敏が現れやすくて、五感(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚)が過敏に反応しすぎるために食べることが難しいことが起こりやすいことがあります。そのことが極端な困難さを説明するときに例として出されることが多いものの、極端な偏食は五感の過敏だけで起こるわけではありません。
五感の刺激だけでなく、精神的にショックなことがあったときに、それが心に強く刻まれて、それが大きな壁となって食べられない、食べることに抵抗があるといったことが起こります。
それでも成長や発達障害の改善のためには栄養摂取は重要で、少しでもよいから食べさせようとして、味に慣れさせるといったことを栄養関係者や教育関係者はすすめようとします。しかし、それが通じないのが自閉症スペクトラム障害の特性といえます。
自閉症スペクトラム障害は好き嫌いが激しくて、それも極端な反応がみられます。「0か100か」「白か黒か」「敵か味方か」といった反応で、少しくらいなら受け入れられる、少しくらいなら我慢ができるといったことは期待しにくくなっています。0点と感じたことは10点や20点か加算されても、0点の判断をします。
食べられないというものを、なんとか工夫して食べられるようにするのではなくて、代わりのものを探して、それによって不足する栄養素を補うという発想です。それができずに無理強いをする、保護者としては無理強いではなくても子どもが無理強いと感じるようなことをしてしまうと、その人が0点、黒、敵と判断されて、その人が作ったもの、提供したものは食べられない、食べないということにもなってしまいます。
注意欠陥・多動性障害の場合は、感覚過敏の子どもは少なくなっています。少ないといっても存在しているのですが、感覚過敏があっても、食材や調理を工夫をすれば食べられるということがあります。「0か100か」といった極端な反応はないので、少しずつ変化をさせていくという方法が通じやすくなっています。
〔発達栄養指南:小林正人〕