発達障害の改善のための支援は、医師の診断から始まります。医師が診断して発達障害であることがわかったところで、特別支援学校・学級や児童発達支援施設、放課後等デイサービスなどでの支援が行われます。仕事の流れとしては、上流の医師から下流へと流れていく形ですが、すべての医師が詳細な発達支援を把握しているわけではないことから、医師の指示に従って実施されているわけではありません。
私たちが取り組む発達栄養は、医師の関与は難しいところがあります。
医師こそは健康全般のリーダーであるように思われがちですが、医師は栄養については詳しくはありません。というのは、医師は職務として栄養指導をすることはないからです。栄養指導をして保険点数がつくのは、つまり収入が得られるのは医療機関の管理栄養士だけとなっています。医師は、いくら頑張って改善のために栄養指導をしても一銭の稼ぎにもならない医療制度となっているのです。
管理栄養士でなければ保険点数がつかない制度を国に働きかけて構築したのは、日本栄養士会の理事長を務めていた管理栄養士で、当時は国立病院の栄養士のトップでもありました。その管理栄養士が、私が学んだ臨床栄養の師匠で、その師匠が後に設立した病院栄養管理の研究所では、私は主任研究員を務めていました。だから、医師の栄養への関心の低さの背景をよく聞かされていました。
それでも患者のために一生懸命に栄養学を学んでいる医師がいるのも事実ですが、大学で栄養学を学びたいと思っても不可能ということもあります。医師養成大学は82校ある中で、栄養学講座が設けられているのは25校だけです。それも学べるのは栄養の不足による疾病の関係がほとんどで、必須科目にもなっていません。
だから、栄養学について積極的に語っている医師は、大学で学んだかどうかは関係なく、卒業後に一生懸命に学んだ結果ということが考えられます。国立病院や大学病院などであれば、医師も現場で管理栄養士の手助けもあって栄養学を学ぶことはできるものの、そのような環境にないと独学で学ぶことになります。
発達障害の栄養指導は、発達障害と食事の関わりを理解して、さらに栄養によるアプローチについて学んだ専門家(小さな存在かもしれませんが)から受けるというのが現実です。そして、いかに親身になった情報提供と支援が受けられるかによって、改善の度合いが違ってくるということも認識しておいてほしいのです。
〔発達栄養指南:小林正人〕