世界の長寿地域の食事を見てみると、主食は、ご飯、パン、いもなど、それぞれ主となるものに違いはあっても共通していることがあります。それは主菜の肉食です。長寿食というと、ヨーグルト、大豆などがあげられますが、肉食が多いことは生活習慣病の原因の一つになるということから、これまでは長寿食としては取り上げられることは少なかったようです。しかし、「高齢者は肉を食べろ」という時代となり、認識が変わってきたようです。
世界の長寿地域だけでなく、発展とともに寿命を長くしてきた国々の大半が肉食文化圏です。日本人も肉食が足りない時代には短命でしたが、戦後には肉食が増えるにつれて、血管が丈夫になり、免疫も高まり、寿命も急速に延びました。そして、一時期は男女ともに世界一の長寿となり、今でこそ男女ともに平均寿命は2位となっているものの、これだけ平均寿命を一気に延ばした国民はいません。
このことだけを見ると、長生きをしたかったら、もっと肉を食べることがすすめられそうですが、そうでないことは多くの人が知っていることです。
栄養が不足した時代には、肉食は、良質なたんぱく源であり、エネルギー源の脂肪も多く、少ない量で健康が維持できる絶好の食事でした。
文明発祥の地は温暖な地域が多く、多くの人口を支えた食品は穀類と野菜類でした。この地域は果物も多く、川沿い、湖沿い、海沿いのところでは魚も多く採れます。ヨーロッパの文明は地中海沿岸から始まったものの、そこから北へと進み、現在のイギリス、ドイツ、フランスの基礎を作った民族は、穀類や野菜、果物などが少なく、魚も身近なところでは少ない地域だったため、栄養源を肉類に頼らざるを得なくなりました。
そのため、肉に含まれる脂肪をエネルギーに変換する能力が優れ、そのエネルギーがたんぱく質を健康維持に役立てる能力も高めることになったのです。