肉食が、ある程度の量で止まっているときには、肉は長寿食でした。日本人の平均寿命が50歳に達したのは昭和22年で、その当時にはアメリカは60歳、北欧は70歳に達していたのですが、そこから一気に平均寿命を延ばすことができたのも肉食の量が大きく関係しています。
長年、肉食に親しみ、寿命を徐々に延ばしてきた欧米人は、肉を多く食べることのデメリットに耐える能力も徐々に身につけてきました。それに対して、日本人は戦後の70年ほどで肉を多く食べるようになり、短期間のうちに平均寿命を世界のトップランクへと駆け上がってきただけに、デメリットに耐える能力は、いまだに備わっていません。
そういった能力を身につけるには、少なくとも遺伝で3代はかかるといわれています。親の世代が戦後に肉食を始めたとすると、現在の高齢者は第一世代で、その孫の世代になって、早い人で、その能力が得られるようになるということです。
欧米人と同じだけ日本人がコレステロールを摂ったとすると、その吸収率は20%も高いとの研究結果もあります。これは長い歴史の中で低栄養の時代が長かったために、脂肪を効率的に吸収できるように体が変化したためと説明されており、そんな体質の日本人がコレステロールを多く摂ったら、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLが血液中に増えすぎて、動脈硬化の危険性が高まってしまいます。
LDLが多くなると、血液中の余分なコレステロールを運び去る善玉コレステロールと呼ばれるHDLも多くなるのが通常のパターンです。ところが、日本人は歴史的にLDLが多くなったことがないので、HDLを作り出す能力も低くなっているのです。
このほかに食事で摂るエネルギー量が多くなると、肝臓で合成される中性脂肪も多くなりやすく、それも動脈硬化を増やす要因になってしまいます。こういった日本人の体質を考えると、適度な肉食は長寿の食事であっても、摂りすぎは、決してよいことではないことがわかるはずです。