寿命と病気に大きな影響を与えているに、免疫力の変化があげられます。戦後すぐの死亡原因の第1位は結核でした。その当時の日本人は低栄養のせいで体格・体力ともに劣っていて、脂肪摂取が足りなかったこともあって免疫力が低かったのですが、食生活が変わるにつれて結核で亡くなる人は大きく減りました。
日本は衛生的な国で、島国であることから感染症も少なく、それに免疫の向上もあって、寿命を一気に延ばしました。その一方で今、日本人の免疫の低下も叫ばれるようになりました。日本は衛生的な上に、清潔にしすぎることから、日常的に感染症を引き起こす細菌やウイルスなどに触れる機会が少なく、そのため海外に行くと、すぐに下痢をしたり、感染症にかかることが指摘されています。
そのことは事実ですが、もう一つ知ってほしいことがあります。それは、温暖化による感染菌などの勢力拡大です。温暖化と言われても、昨夏の猛暑を経験するまでは、あまり実感していない人も多かったかもしれません。気象データの変遷をみると、着実に地球は温暖化しています。環境省の発表資料によると、20世紀の100年間で地球の平均気温は0.6℃上昇しました。1990年代の10年間は、過去1000年で最も温暖な10年となっていたのです。
温暖化というと、まず注目されたのは熱中症や蚊の発生数が増えることによる媒介感染の拡大です。感染性の細菌やウイルスは温暖化によって気温が上昇すると温度が高いところへと移っていくので、例えば媒介感染する蚊が活動範囲を広げていくと、それにつれて細菌やウイルスも広まっていき、健康被害を引き起こすようになります。
気温上昇と海水温の上昇によって、近海の魚が北上し、北海道の魚も北上して漁場が変わってきた、漁獲量が低下しています。東京湾には、かつては瀬戸内海にしかいなかった貝や沖縄にしかいなかった珊瑚までが見られるようになっています。
それと同じように、細菌やウイルスなども活動範囲を広げています。直接、死につながるコレラやマラリア、デング熱などは、熱帯地域に近いほどに気温が上昇しないと日本で増殖するようなことはありません。しかし、これらに比べると感染力は弱くても、感染性の細菌やウイルスは気温が上昇するほど活動範囲を広げてきていることは間違いありません。