胃と腸から分泌される消化液の種類は国民によって異なることはありませんが、分泌量は違っています。日本人は歴史的に米食中心で糖質を多く摂ってきたことからアミラーゼの分泌量が多くなっています。これによってエネルギー源となるブドウ糖を多く取り込むことができる体質となりました。
これは低栄養の時代には有効な仕組みでしたが、栄養過多の時代には血糖値を急上昇させる原因になっています。血糖値が上昇すると肝臓で合成される脂肪酸が増えるとともに、コレステロールの合成も進みやすくなります。脂肪の摂取量が少なければ優位に働くものの、現在のように脂肪の摂取量が多いと体内での脂肪の作りすぎにつながる仕組みとなっています。
脂肪の分解は十二指腸から分泌される胆汁による乳化作用によって行われますが、胆汁はコレステロールを原材料にして肝臓で生成されています。日本人の肝臓が小さく、加齢によって縮小しやすいのは、歴史的にコレステロールが多く含まれる肉食などの食品を多く取ってこなかったためであると言われています。もともとコレステロールの蓄積量が少ないので、胆汁も作られにくく、さらに日本人は歴史的に長生きしてこなかったため、高齢になると胆汁の分泌量が大きく低下しやすくなっています。
そのために、脂肪が分解しにくいわけですが、高齢者は筋肉量が低下していることから、高齢者には筋肉の材料となるたんぱく質が豊富な肉食がすすめられています。しかし、肉類には脂肪が多く含まれていて、その消化が充分にできないことから、どうしても肉食が減るようになります。そこで胆汁を多く分泌させるために、胆汁を作り出す肝臓の機能を高めることが重要視されています。
また、十二指腸から分泌された胆汁の主成分である胆汁酸は、90~95%が小腸下部の回腸で再吸収されて、静脈の門脈を通って再び肝臓に戻ってきます。この腸肝循環が正常に働いていると再び胆汁となって分泌される量が増えることになります。