消化は、飲食したものを分解して吸収される形にすることで、胃で消化した後に腸で吸収されるのが一般的な印象ですが、実際には消化は小腸と大腸でも行われています。小腸では小腸液のほかに膵臓からの膵液、肝臓からの胆汁と混じり合い、小腸でも消化は続いています。
胃で分泌されるのは糖質とたんぱく質の消化液だけで、完全に消化されるまでに糖質(主食:ご飯、パン、麺類など)は約2時間、たんぱく質は約4時間かかります。
胃と小腸をつなぐ部分の十二指腸からは胆汁が分泌され、脂肪が消化されます。十二指腸の名称は、欧米人の男性の指を12本並べた幅の長さ(約25㎝)があることから名付けられました。
消化腺から分泌される消化液は、器官によって異なり、それぞれが複合的に作用して分解しています。口の中(口腔)では、唾液腺から分泌される消化酵素の唾液アミラーゼによって、デンプンやグリコーゲンが単糖のグルコース、二糖類のマルトース(グルコースが2分子結合)、オリゴ糖(数個の単糖類が結合)に分解されます。そして、膵臓から分泌される膵アミラーゼによってデンプンが二糖類のマルトース(麦芽糖)に分解されます。マルトースを単糖のグルコース(ブドウ糖)まで分解する消化酵素のマルターゼは小腸壁にあり、小腸内で最終的に分解されます。
胃では、胃底線から分泌される消化酵素のペプシンによって、たんぱく質がペプトンに分解されます。ペプトンは複数のアミノ酸が結合したオリゴペプチドやポリペプチドの状態になったものです。ペプトンは膵臓から分泌される消化酵素のトリプシン、キモトリプシンによって、より細かく分解され、小腸から分泌される消化酵素のエレプシンによってアミノ酸まで分解されます。
胃の胃底線からは脂肪の分解酵素の膵リパーゼが分泌されますが、膵リパーゼが働くためには脂肪の乳化が必要で、そのためには十二指腸から分泌される胆汁が必要になります。つまり、脂肪は十二指腸から先で分解されることになります。そのために、脂肪が分解されるまでには約6時間もかかっています。糖質の多い食事では短時間で空腹を感じやすく、脂肪が含まれた食事をすると空腹を感じにくく、腹持ちがよい状態になるのは、こういった仕組みがあるからです。