Medical Diet27 脂肪は体内では燃焼していない

脂肪燃焼という言葉はイメージしやすく、効果も伝えやすいことから講演などで言葉としては使うことがあるのですが、受講者に渡す資料でも講習テキストでも“代謝”に統一しています。
一時期「燃焼系サプリメント」が流行していましたが、その販売メーカーに知り合いがいたことから、何を意味する言葉として使っているのか聞いたことがあります。そのときの答えは「健康的に活き活きと燃焼した生活をしてほしい」という理解が難しいような表現でした。要は、脂肪を燃焼させる意味ではないということで、確かにパッケージにもチラシにも“脂肪”“燃焼”も使われていませんでした。
燃焼というのは燃えることで、脂肪を燃焼させようとしたら300℃以上の温度が必要になります。燃えやすい紙でも200℃ほどにはしないといけません。体内では最高の温度は42℃で、これ以上の温度になったら生命維持ができなくなります。というのは、細胞を構成しているタンパク質は42℃を超えると変成して、生きたタンパク質ではなくなるからです。だから、体温計の目盛りは42℃までしかないのです。
では、どうやって脂肪からエネルギーを作り出しているのかというと、細胞のミトコンドリアの中にあるTCA回路で、電子と水素のやり取りをしながら酸の化学反応を起こして、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出しています。と書くと、ATPという物質が新たに作り出されているようにも思われがちですが、実際にはADP(アデノシン二リン酸)にリンが一つ追加されて、ATPになっているだけです。このATPからリンが離れてADPになるときにエネルギーが発生しています。
脂肪の最小単位の脂肪酸はTCA回路に入るときに、アセチルCoAという化合物になっています。このアセチルCoAに変化することで脂肪酸は減っていきます。これがエネルギー代謝の始まりで、燃焼のほうがイメージしやすくても、代謝を使って説明しています。そのために説明が長々と必要で、理解するのにエネルギーが必要となるのですが、燃えてはいないという事実があるので、あえて面倒なことをしています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)