Medical Diet34 乳酸は疲労物質なのだろうか

運動をすることによって発生して、身体にとってマイナスになるものとして活性酸素と乳酸があげられます。乳酸は細胞の中のミトコンドリアで糖質が代謝・分解されるときに発生するものです。ミトコンドリアの中に入った糖質のブドウ糖がTCA回路に取り込まれた後には、酸素を用いながら効率的に変化してエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生します。このときには完全燃焼のようなエネルギー代謝になることから余計なものが作られることはありません。
TCA回路に取り込まれる前にもエネルギー産生は行われていて、これは解糖系と呼ばれる嫌気性代謝(酸素を用いないエネルギー代謝)で、このときに乳酸が作られます。
乳酸は疲労物質とされています。というのは、乳酸が多く発生すると筋肉の動きが抑制されるようになるからです。筋肉が働きすぎると筋肉の炎症や傷み、関節の傷みなどを起こします。そのため筋肉が過剰に動くことがないように、ブレーキ役として乳酸が作られます。乳酸が多く発生するほど筋肉の動きが悪くなることから、疲労物質とされているのです。
その仕組みですが、乳酸そのものが原因ではなくて、乳酸が作り出されるときに発生する水素イオンによって身体が酸性に傾くようになることと同時に、エネルギー源となる筋肉の糖質であるグリコーゲンの蓄積が少なくなることから疲れやすくなります。
また、筋肉の収縮を起こす筋小胞体とも関係があります。筋小胞体は筋繊維(筋肉細胞)の中にある収縮刺激伝達のための構造です。弛緩したときにはカルシウムイオンが含まれ、カルシウムイオンが放出されるときに筋肉が収縮します。ATPにはリン酸が3個結びついていますが、リン酸が1個はずれてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。このリン酸がカルシウムイオンの放出を阻害することから、筋肉が激しく動いてATPが多く作られるほど筋肉の収縮が起こりにくくなっているのです。