Medical Diet55 糖質制限はダイエットの切り札なのか

ダイエットだけでなく、健康を維持するためにも糖質制限がすすめられることがあります。糖質制限は、糖質を摂らないか極端に減らした食生活をすることを指しています。糖質にはブドウ糖が含まれていて、すぐにエネルギー化するブドウ糖が不足すると脂肪細胞に蓄積された中性脂肪が分解されて、脂肪酸として放出されることから体脂肪(内臓脂肪、皮下脂肪)を減らすことができます。
また、ブドウ糖が血液中に多くなると膵臓からインスリンが分泌されますが、インスリンには肝臓での脂肪合成と脂肪細胞への脂肪蓄積を促進作用があるので、糖質制限をするとダイエット効果が高いことになります。
糖質制限の方法は、これまで低炭水化物ダイエット、炭水化物抜きダイエット、脱炭水化物ダイエット、低インシュリンダイエットとして名前を変えながら何度もブームを起こしています。
糖質制限は炭水化物を摂らなくても、ブドウ糖が不足すると、脂質やたんぱく質がブドウ糖に合成される糖新生が起こるので、ブドウ糖が体内で欠けることはない、と説明されることがあります。しかし、糖新生は飢餓状態で起こる危機的状態を回避するための緊急措置の反応であって、厳しい糖質制限は長く続けられるものではありません。
低炭水化物ダイエットについては、ギリシャ・アテネ大学医学部の国際研究チームが4万人以上の女性を15年以上観察したところでは、心血管疾患(心筋梗塞、狭心症など)のリスクが高まったことが報告されています。また、日本の国立国際医療研究センター病院の約27万人の研究調査によって、循環器疾患のリスクが1.31倍にもなるとの報告がされています。
低炭水化物の食事をすると内臓脂肪を脂肪酸に分解する作用が起こるため、内臓脂肪の蓄積が多い男性は効果が出やすく、皮下脂肪の蓄積が多い女性では内臓脂肪が減ってから皮下脂肪が減っていくため、その効果が表れにくい特徴があります。女性ホルモンのプロゲステロンには皮下脂肪を蓄積させる作用があり、皮下脂肪が減りにくくなっています。
また、女性は体脂肪の蓄積量が多く、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)には脂肪合成、脂肪蓄積を進める作用があるため、糖質制限は女性では効果が出にくくなっているのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)