病気を治すことだけでなく、病気にならないようにすることも医師に期待される時代となっています。これまで医療における医師の役割は、診断と治療が中心でした。病気になってから治すことに加えて、病気にならない方法を指導してくれる専門家も医師であるとの認識がされるようになってきました。
このことは火事にたとえられることがあり、火事が発生してから消防署員が駆けつけて消化に取りかかるだけでなく、火事が起こらないようにする防火意識の向上や“火の用心”も消防の重要な役割となっています。
病気にならないように先回りして取り組む“健康・火の用心”は、まさに医師の役割で、そのための知識も豊富に得ている存在が医師であると期待されているところです。医師国家試験に合格するためには、身体や健康に関わるすべての知識があるように、これに期待されるところです。
予防に関わる三大要素といえば食事、運動、休養と相場が決まっています。この三大要素は、厚生労働省から(実際には厚生省と労働省が統合される2001年の前の厚生省から)健康づくりの基本として発表されています。
今は、休養ではなく“睡眠”が三大要素の一角を占めるようになり、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が発表されています。厚生労働省からは他に「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が発表されていて、“掛け声”ではなく具体的な方法が示されるようになっています。
これらのガイドなどを理解して、活用すれば健康の維持・増進ができるといっても、これは個人向けのものではなくて、健康づくりを指導する立場の人に向けてのものです。個人で実践するとなると、理解力には個人差があり、理解できたとしても生活条件は異なっているので、的確なアドバイスをしてくれる立場の人が必要です。
それを医師に頼ってよいのか、それとも別の立場の専門家に求めるべきなのか、そのことを知るのが、自分で自分の健康を考えて実践するセルフメディケーション(self medication)、略してセルメ(selme)で、この連続コラムのテーマの「SELME」の出発点になるところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕