シクロデキストリン

シクロデキストリン(cyclodextrin)は、「シクロ(cyclo=環状)」と「デキストリン(dextrin=オリゴ糖)」の合成語で、「サイクロデキストリン」、「環状オリゴ糖」ともいいます。原材料は馬鈴薯(ばれいしょ)やトウモロコシのでんぷんです。シクロデキストリンには3種類あり、ブドウ糖が連なってできたオリゴ糖の両端がつながって輪(環)になっていて、ブドウ糖が6つ結合して輪になったものを「α‐シクロデキストリン」、7つ結合して輪になってものを「β‐シクロデキストリン」、8つ結合して輪になってものを「γ‐シクロデキストリン」と呼んで、区別しています。その内径はα‐シクロデキストリンでは0.5~0.6nm(ナノメートル)、β‐シクロデキストリンでは0.7~0.8nm、γ‐シクロデキストリンでは0.9~1.0nm(1nm=10億分の1m)と、いずれも微小なナノ粒子となっています。シクロデキストリンは底のないカップ形状で、その内側は親油性(油にみやすい性質)、外側は親水性(水に溶けやすい性質)という相反する2つの性質を併せもっています。その性質から、シクロデキストリンは水に溶けない油分に対しても、その内部空洞に油分を取り込み、そして外側は親水性を示すことで、きわめてスムーズに水になじむという特徴があります。こうした「内側=親油性」「外側=親水性」の二重構造をもつナノ粒子ということで、シクロデキストリンは、他に類をみない特性に富む、さまざまな作用を示します。代表的な機能として包接(ほうせつ)と徐放があります。シクロデキストリンは、その内部空洞の中に、さまざまな分子を取り込む性質をもっていて、その現象を「包接」、その逆に包接した分子が少しずつ出ていくことを「徐放」といいます。たとえば、辛味や香料などの有効成分をあらかじめ包接化しておき、徐々に放出することで長時間利用することが可能となります。また、紫外線や熱などに弱い物質や、酸化、加水分解されやすい不安定な物質などを包接することで安定化させることができます。つまり、シクロデキストリンが紫外線や熱、酸化、加水分解などから有効成分を守ることで、変質を防ぎ、保存性を高めることができます。そのことによって生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)が飛躍的に向上します。 例えば、コエンザイムQ10のような脂溶性物質は、空腹時ではほとんど吸収されないことがわかっていますが、γ‐シクロデキストリンで包接することで、いつ飲んでも吸収性と持続性を向上させることができます。この機能をさまざまな形で利用して、粘度調整、マスキング、吸湿性防止、粉末化、可溶化といった機能に応用できます。
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