伝統的長寿食「ケフィア」に注目
旧ソ連の黒海とカスピ海の間の山岳地帯である「コーカサス地方」は、世界三大長寿地域の一つに数えられています。この地域ではケフィアという伝統的な発酵乳が永く食されてきました。一般的なヨーグルトは乳酸菌の発酵であるのに対して、ケフィアは複数の乳酸菌と酵母を共生発酵させたものです。旧ソ連や東欧では病人の治療食としても利用されています。
長寿食の研究において、ケフィアには整腸作用、血糖値や肝機能の改善、悪玉コレステロール値の低下、免疫力の向上、アレルギーの緩和など幅広い機能性が確認され、学会・論文発表等がなされてきました。その後の研究により、ケフィアの幅広い機能性は「ケフィラン」というケフィア独特の物質によるものであることがわかりました。ケフィランはケフィアに含まれる乳酸菌(LK乳酸菌)が作り出す粘性の多糖類です。ケフィアが他の発酵乳に比べて粘り気があるのはケフィランによるものです。
日本では定着せず
ケフィア製品は、日本において1980年代に複数の乳製品会社から発売されましたが、幅広く定着はせず、現在は発酵乳としての製品は見当たりません。理由の一つに当時ケフィアの原料となるケフィア粒の他の地域への持ち出しに制限があったことがあげられます。
他の理由ではケフィアの製造にあたって乳酸発酵に加えてアルコール発酵を伴うことから炭酸ガスが発生すること、微量とはいえアルコールを含有することがあげられます。炭酸ガスの発生は製品の流通において容器の制限を受けます。また、日本人はアルコールに対しては神経質で、微量に含有しているとはいえ、特に幼児への影響が懸念されたのではないかと思われます。
もう一つの理由は、嗜好性の問題です。いわゆる「口に合う、合わない」の問題です。他の乳製品と比較して粘り気が強く、アルコールも含有していること等により、日本人の嗜好に合わなかったと思われます。どんなに健康維持・増進に役立つものであっても、外来の食物や飲料を日本に持ち込むには、日本人の嗜好に合う味や風味にアレンジすることが必要になります。
これらの理由からケフィア製品は日本に定着しなかったと考えられます。
ケフィラン高含有の食品素材の開発(開発に8年の歳月)
ケフィアの持つ高い機能性を活かしながら、日本人の嗜好に合う食品素材の開発をするためには、ケフィランを効率よく生産する技術を開発する必要がありました。ケフィランはケフィアに含まれるLK乳酸菌が作り出す粘性の多糖類であるので、LK乳酸菌を大量に単独培養して大量のケフィランを作り出すことを試みました。LK乳酸菌の単独培養において、アルコール発酵は伴わないのでケフィアの欠点を克服することもできます。
しかし、通常LK乳酸菌は単独で生息することはなく、ケフィアの中で他の乳酸菌や酵母などと家族の一員として共同生活をしています。このような環境で生息している菌を単独で培養することは過去に成功例はなく、大変困難を極め、技術の確立には8年の歳月を要しました。
米ケフィランの誕生(乳から米へ)
LK乳酸菌の単独培養の独自技術確立により、ケフィラン高含有の食品素材の開発が可能になりました。また、発酵させる培地をいわゆる「乳」ではなく、「米」を液化した培地を用いることにより、日本人の嗜好に合った風味で、低カロリー、脂質ゼロの高機能でヘルシーな食品素材の開発に成功しました。「米ケフィラン」の誕生です。米ケフィランは、米がLK乳酸菌という乳酸菌によって従来の欠点を克服した高機能ケフィアに変身したということになります。
自家製ケフィアの250倍ものケフィランを含有
米ケフィランはLK乳酸菌を培養しケフィランを産生させた後、濃縮、粉末化しています。米ケフィランは100gあたり500mg以上のケフィランを含有しています。現在、日本では市販されている材料を用いて自家製ケフィアを作ることができますが、自家製ケフィアにはケフィランが100gあたり2mgほどしか含まれていません。米ケフィランは自家製ケフィアの250倍ものケフィランを含有しています。つまり、米ケフィランを400mg摂取するだけで自家製ケフィアの100g分のケフィランを摂取できることになります。
米ケフィランとケフィアの成分比較(100g当たり)
米ケフィランの有用性
米ケフィランは開発後、抗動脈硬化作用、抗アレルギー作用、血糖降下作用、整腸作用、腸内環境改善作用、肝機能改善作用、花粉症症状の改善等、さまざまな有用性に関するデータを積み重ねています。また、米ケフィランには米に含まれるペプチドやギャバなどの有用成分を含んでおり、抗ストレス作用、血圧調整作用等にも期待できると考えられています。
資料提供:大和薬品株式会社