「三」10 三人寄れば文字の知恵

今回の三にまつわるコラムの題は「三人寄れば文殊の知恵」の間違いではなくて、わざわざ「文字の知恵」にしています。

先に「三人寄れば文殊の知恵」から説明しておくと、凡人でも三人集まって相談すれば、よい知恵が出るという意味です。文殊は知恵を司る菩薩で、菩薩は悟りを求める人を指します。

三人というのは、ただ数だけの話(二でもなく四でもなく)ではなくて、自らは凡人と称していても仏教の世界の知恵のある人を指しています。

知恵は単なる知識のことではなくて、仏教用語では正しく物事を認識して判断する能力を指しています。正しい認識ができないままの判断はよくないことであり、導き出された結論もよい結果に結びつくかわからないことになります。

一つのことを成し遂げるには、それぞれ役割が異なる人が、同じ目的で、同じ思考で取り組むことが大切で、特に他人に伝えるための重要なツールである文字(文面)では、書き手だけでは充分と言えないことがあります。

書籍にしてもネット上の文にしても、書き手(作家やライター)が書きたいことを書いたとしても、これを表現する場が必要で、その場に適した表現が求められます。書きっぱなしで、掲載すればよいというのは、相当の有名人の文に限られます。

出版で言えば作家と編集者の関係で、編集者は名前が出ないとしても書籍が完成して、書店なりで販売されて、読んでもらうためには必要な存在です。もう一人の存在もあって、書籍のタイプによって異なるものの、ゴーストライターという三人目の知恵を出す人がいます。

出版の世界では、その第三の立場で私が文字にした書籍は184冊、雑誌は178冊を数えます。ただ下請けで書いたというよりも、自分の書く技術があるから書籍が企画された、代わりに書くことができたから出版が決まったということもあります。

と言っても、ゴーストライターは書籍に名前が出る表の書き手がいて、それを出版させる編集者がいて成り立つことなので、三人が寄らなければ文字として残せなかったということで、妙なタイトルでコラムを書いてみました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕