「朝食抜きは太る」は新常識か

朝食を食べていない人は、国民健康・栄養調査(平成29年)によると男性で15.0%、女性で10.2%となっていて、欠食率が最も高い20代では男性が30.6%、女性が23.6%と、かなり高くなっています。この調査の場合は調査日に朝食抜きであった人の割合で、欠食は食事をしなかった場合だけでなく、サプリメントや栄養ドリンクのみ、菓子や果物、乳製品、嗜好飲料などのみも含まれています。
朝食抜きの理由は、さまざまですが、中には母親がダイエットで朝食を抜いているので、それに付き合っているという場合もみられます。ダイエット目的で本人の意志で食べない、飲み物だけという例も多く、朝食を食べなければ、その分のエネルギー摂取がなくなるので、太らない、やせると考える人がいるのは仕方がないことです。しかし、朝食を食べないと太るということがメディアで取り上げられ、それについて“新常識”として伝えられているのは驚きました。しかも、その放送局が、日本メディカルダイエット支援機構から情報発信しているところだったので、私たちの情報発信の努力が足りなかったのかと反省をしなければならないことではあります。
メディアが取り上げた新常識では、朝食を食べないと体内時計が朝であることを認識できずに、体内時計がリセットできないことが原因で、朝食を抜くと空腹を満たすために昼食を食べてしまうので、どうしても食べすぎになるという説明をしていました。これは私たちの説明とは違っています。私たちは、食後の体温の上昇、専門用語では食事誘発性熱産生で説明しています。
1日の消費エネルギー量のうち約70%は生命維持のための基礎代謝で使われ、約20%が活動代謝、そして残りの約10%が食事誘発性熱産生です。10%というのは1日に3回の食事をした場合のことで、1食を抜くと、その3分の1が使われないことになります。1日に1800kcalの消費エネルギー量で、それと同じ量を食事で摂った場合、つまり2食で3食分の摂取エネルギー量を摂った場合ですが、食事誘発性熱産生は180kcalで、そのうちの60kcal分が1食抜きで使われなかった分となります。
体脂肪1kgは約7200kcalなので「7200÷60=120」となり、120日(4か月)で1kgの体脂肪が蓄積していくことになります。わずかのように感じるかもしれませんが、1年間で3kg、2年間で6kg、3年間で9kgの体脂肪が蓄積されることを考えると、朝食を抜いても平気だということは言えなくなるはずです。