ほうれん草はアク抜きが必要か

テレビの健康や栄養を扱った番組が放送された後に、他の局のディレクターから問い合わせが寄せられることがあります。先日も、「ほうれん草はアク抜きしないと食べられないのですか」との質問がありました。番組では、ほうれん草はアク(灰汁)が強く、アクにはシュウ酸が含まれているのでアク抜きが必要ということをクイズの解答方式で紹介していました。
シュウ酸はカルシウムと結びつくとシュウ酸カルシウムとなり、不必要なものとして排泄されます。カルシウムは骨の材料だけでなく、神経伝達物質でもあるので不足させてはいけないということです。
昔のほうれん草にはアクが多く、アク抜きしないと食べられなかったというのは事実です。しかし、今では品種改良が進み、アク抜きしなくても食べられるもの、生のサラダでも大丈夫という品種も出ています。京野菜などの伝統野菜は、「アク抜きをしてください」と、わざわざ表示して販売されているものもあります。
アクの心配がないものをアク抜きしても何も問題がないというなら、古い情報を取り上げてもよいのでしょうが、お湯の中にほうれん草を入れて茹でると水溶性のビタミンは溶け出てしまいます。特に抜けやすいのはビタミンCです。
戦後初の昭和22年の食品成分表を見ると、ほうれん草の可食部(食べられる部分)100g当たりのビタミンCは150mgでした。それが改訂版が出るたびに100mg、65mgと減り、今では旬と旬以外の含有量の違いも示されています。それによると旬の季節のものは60mgですが、旬以外では30mgにもなっています。旬であっても、以前の平均値には届いていないことになります。
そんなにも少なくなったビタミンCが無駄なアク抜きのために減ったのでは、「ほうれん草はビタミン豊富」などと番組で取り上げても間違いではないのか、と気になってしまいます。