有酸素運動によって最大酸素摂取量を高めることでエネルギー代謝が高まることについて、EPOC(excess post-exercise oxygen consumption)効果を取り上げて説明をしてきました。最大酸素摂取量の60〜70%は有酸素運動から無酸素運動に切り替わる前のAT(Anaerobic Threshold)ポイントで、これ以上の負荷がかかる運動は湯酸素運動であるウォーキング、ジョギング、ランニング、サイクリング、スイミングも無酸素運動になってしまいます。
ATポイントの範囲での運動は、有酸素運動をしているときの脂肪代謝を高めるだけでなく、運動をしていないときにも脂肪代謝が高まるのがEPOC効果です。運動は負荷がかかるほどエネルギー代謝が高まるというのは、あくまでATポイントの範囲内での話であって、無酸素運動になったら主なエネルギー源は脂肪酸からブドウ糖に切り替わります。というのは、有酸素運動と無酸素運動では主に使われる筋肉の種類が異なるからです。
筋肉は白い色をした白筋と赤い色をした赤筋に大きく分けられます。赤筋は酸素を貯蔵するミオグロビンを多く含んでいることから赤くなっています。酸素と結びつくにはミネラルの鉄が必要で、鉄が多いと赤色になります。赤血球が赤いのも、酸素を結合して運ぶために鉄が多く含まれているからです。
無酸素運動は酸素なしでもできる運動で、長時間できないものの、瞬発力を発揮して強い力を出すことができます。そのためには、すぐにエネルギーになるブドウ糖が使われます。それに対して赤筋は弱い負荷の運動を長時間続けられる筋肉で、エネルギー源は脂肪酸です。脂肪酸を消費することによって、脂肪細胞の中に蓄積されている中性脂肪が分解されて、血液中に脂肪酸が放出されるようになります。
有酸素運動は体脂肪を減らす効果があるといっても、だらだらと歩くくらいの運動強度では期待するほどの脂肪代謝は起こりません。無酸素運動ほどきつくはないものの、ややきつさを感じる最大酸素摂取量の60%を超えた負荷がかからないと、脂肪を効果的に使うエネルギー代謝は起こりにくいということです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)