あくまでも噂話67「アナログ感覚はイメージしやすい」

今やデジタル全盛時代で、体温測定も血圧測定も、数字だけを示されてもピンとこないことがあります。以前は水銀を用いて、体温も血圧も測定していました。水銀体温計は小型で使いやすくて、正確で、消毒もしやすいというので、体温測定の基本とされてきました。難点はガラス製なので落とすと割れやすく、水銀が漏れ出ることと、正確に測定するには10分ほどかかることでした。
そこでデジタル式の体温計が開発されたわけですが、温度によって水銀が熱膨張して伸びることで、どこまで体温が上がったかが目で見てわかります。水銀体温計の目盛りは42℃までだったので、これ以上の体温になると危険だということも理解しやすくて、体温が42℃に近づいてきたら休むように呼びかける意味も伝わりやすいということがありました。
なぜ、42℃までしか目盛りがついていないのかというと、細胞が正常な状態に保たれる限界の温度で、それ以上になると全身の細胞が変化して機能しなくなります。つまり、死んでしまうということです。生卵を温めると凝固することでイメージしやすいかと思います。
水銀血圧計は水銀の重量を活用したもので、血圧の単位はmmHgとされていますが、Hgは水銀のことで、mmHgは水銀柱の高さを表しています。血圧が120mmHgというのは水銀を120mm(12cm)押し上げる圧力で血管を圧迫していることを示しています。
血圧が危険とされる200mmHgでも20cmなので、それほどの圧力ではないように感じるかもしれませんが、水銀の比重は13.5g/cmで、水に対する密度で示されています。水の比重を1g/cmとして、その何倍かで比重が測定されます。
血圧が120mmHgというと収縮期血圧の正常範囲の下のほうですが、「120mm×135」は1620mmで、1m62cmとなります。つまり、血液を身長の高さまで押し上げる力がかかっていることになります。
これは血圧が200mmHgと危険とされる高血圧では、「200mm×135」で2m70cmの高さまで吹き上げる勢いになります。
これだけの勢いが血管を流れているときに血管壁にかかり続けていたら、血管に大きなダメージが与えられるのは当たり前のことで、水銀血圧計では目盛りを見ることでアナログ的に血圧の上昇がわかりやすかったのです。デジタルでは単なる数字なので、わかりにくくなり、これが血圧の上昇を軽視する風潮にもつながっていると言えます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)