脂肪と一般に呼ばれるのは中性脂肪で、貯蔵型の脂肪のことです。人間の身体の脂肪細胞の中に蓄積されているのは中性脂肪で、動物食品に含まれる脂肪も中性脂肪です。中性脂肪はグリセリドという脂肪に、脂肪酸3個が結びついた形をしています。
食品で摂った中性脂肪は、そのままの形では小腸から吸収されることはありません。そのため消化液によって脂肪酸に分解されてから吸収されます。体内でエネルギーとして使われなかった脂肪酸は、肝臓で中性脂肪に合成されてから脂肪細胞の中に取り込まれます。そして、脂肪酸が体内で不足したときには、脂肪細胞の中の中性脂肪が分解されて、脂肪酸が血液中に放出されます。
食事経由の脂肪酸も、脂肪細胞から放出された脂肪酸も、全身の細胞に取り込まれて、細胞の中にあるエネルギー産生の小器官であるミトコンドリアに入って、エネルギー化されます。ミトコンドリアに入ってからの流れについては、前(エネルギー代謝4)に紹介しましたが、ミトコンドリアの膜を脂肪酸が通過するときにはL‐カルニチンと結びつく必要があります。
L‐カルニチンは生命維持の重要な成分ということで、必須アミノ酸のリシンとメチオニンを材料に肝臓で合成されているのですが、合成のピークは20歳代前半で、年齢を重ねるほど合成量も体内の保持量も減っていきます。そのことが加齢による代謝の低下を起こしているのです。
体内で合成されるL‐カルニチンが大きく不足するために身体に異常が起こる疾患にカルニチン欠乏症があります。これは筋肉壊死、ミオグロビン尿、脂質蓄積性ミオパチー、低血糖、脂肪肝、筋肉痛、極度の疲労、心筋症を伴う高アンモニア血症を起こすもので、その改善のために使われる医薬品がL‐カルニチンです。
2001年まではL‐カルニチンは医薬品の成分としてしか使うことができなかったのですが、2002年に食品の成分としても使うことが許可されました。そのおかげで今はエネルギー代謝促進のサプリメントとしても活用することができるようになりました。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)