オリゴ糖と環状オリゴ糖の違い

このコーナーで何度か登場しているシクロデキストリン(cyclodextrin)は環状オリゴ糖とも呼ばれていますが、これは一般のオリゴ糖とは違うと説明しても、いまだに理解が充分ではないようで、どこが違うのかという質問は続いています。
オリゴ糖は、消化酵素によって分解されないために小腸から吸収されず、大腸内でビフィズス菌などの善玉菌の栄養源になる難消化性の糖です。オリゴ(oligo)は「少ない」の意味で、最小単位の単糖が2~20個、鎖状に結合した構造をしています。代表的なオリゴ糖にはフラクトオリゴ糖(アスパラガス、ニンニクなど)、イソマルオリゴ糖(ハチミツなど)、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖(母乳や牛の初乳)、キシロオリゴ糖(食物繊維を発酵させた難消化性オリゴ糖)などがあります。
腸内細菌の善玉菌の代表であるビフィズス菌の増殖のほか、便秘や下痢の改善、たんぱく質の消化吸収の促進、ミネラルの吸収の促進、脂質代謝の改善などの作用があります。腸内細菌の善玉菌を増やす働きがあるものをプレバイオティクスといいますが、その代表的なものがオリゴ糖です。通常のオリゴ糖は鎖状ということで、1本もしくは途中で枝分かれした形となっています。
それに対してオリゴ糖の両端がつながって輪になったのが環状オリゴ糖です。6個が輪になったα型、7個が輪になったβ型、8個が輪になったγ型があります。自然に環状になっているわけではなく、工業的に輪にする技術があり、α型とγ型の技術はドイツのワッカー・ケミー社によって開発されました。“ワッカー”が輪っかというのは偶然の名称一致です。原材料はトウモロコシのデンプンです。ブドウ糖は小さなものなので、8個の環状でも直径が1nm(ナノメートル)で、0.000001mm(ミリメートル)という極小サイズです。
細胞の中のDNAの大きさといってもわかりにくいと思いますが、環状になることで、輪の中に成分を取り込む作用があり、それが1nmで勢ぞろいするので溶けやすく、吸収されやすくなります。吸収率が1%でしかないコエンザイムQ10がγ型の環状オリゴ糖の中に入ると、最大で18%にもなるとの研究結果もあります。この技術を活用したサプリメントがDHCなどの包接型のエンザイムQ10です。
輪の中に入った成分は胃液では分解されにくくなり、周りが包まれた形になるので味をマスキングすることができるようになります。緑茶成分が濃い状態になると苦くて飲めなくなりますが、γ型の環状オリゴ糖を活用すると飲めないほどではなくなります。これが花王のヘルシアの技術です。苦いウコンを濃くしたものもγ型の環状オリゴ糖によって飲めるようになります。これがハウスのウコンの力です。黒コショウは苦味と強い刺激がありますが、これをγ型の環状オリゴ糖によって摂りやすくしたのがファンケルの大人のカロリミットなどに使われているブラックジンジャー(黒こしょう)です。
難消化性デキストリンは糖質の吸収をゆっくりとさせて血糖値の急上昇を抑え、脂質の吸収を阻害しますが、これは鎖状のオリゴ糖です。この力が強いのがα型の環状オリゴ糖です。
食べ物以外でも使われていて、消臭剤のファブリーズの中身はγ型の環状オリゴ糖で、輪の中に臭い成分を吸着しています。ペットのためのデオシートは腐敗菌が避ける成分がγ型の環状オリゴ糖に入っていて、徐々に出ている間は腐敗しないので臭いの発生を抑えることができます。
少なくとも普通のオリゴ糖では、このような効果はありません。