コレステロールは悪玉という考えが未だに広まっているということなのか、食品の表示に「コレステロール“ゼロ”」と書かれているものがあります。そのほとんどは植物性の材料から作られているものです。コレステロールは動物性の食品に含まれている脂肪成分なので、動物性の材料が使われている食品の表示ならあり得ることです。健康食品は見た目では何が使われているのかわからないので、“ゼロ”表示は選択に役立つかもしれません。しかし、ジュースの表示で、それも野菜や果物が材料のものに“ゼロ”表示は無理を感じます。当たり前のことを表示するのは過剰表示でも不当表示でもないと言いたいのかもしれませんが、消費者を惑わすのが不当表示という考え方をするなら、これは問題ありです。
コレステロールは「悪玉コレステロール」と表現されることがあるので、悪いものという印象が抱かれがちです。悪玉コレステロールと呼ばれるのはLDLコレステロールの通称です。LDLコレステロールは低比重リポタンパクといって、コレステロールを全身に運ぶものです。コレステロールは脂肪で、血液は水分なので、水と油の関係から、そのまま血液中に入ると固まってしまい、流れにくくなります。そこで、タンパク質やリン脂質でコレステロールを包むような形でコレステロールを運んで届けています。
このLDLコレステロールが多くなりすぎると動脈硬化のリスクが高まることから悪玉と呼ばれるようになりました。しかし、コレステロールは全身の細胞膜の材料でホルモンや胆汁の原料となっています。コレステロールが不足したのでは生命維持ができなくなります。コレステロールが多いほうが長生きであるとの研究成果もあります。
コレステロールは生命維持に必要であることから肝臓の中で合成されています。合成の材料となっているのは糖質、脂質、たんぱく質です。これらの三大エネルギー源を多く摂りすぎるとコレステロールが多く合成されるようになり、それを運ぶためのLDLコレステロールも多くなります。LDLコレステロールが血液中で多くなる要因は、コレステロールが多く含まれた食品を摂ることではなく、全体的なエネルギー源の摂りすぎだったのです。
LDLコレステロールが多くなると動脈硬化のリスクが高まるのはLDLコレステロールのせいというよりも、LDLコレステロールが活性酸素によって酸化するためです。活性酸素を減らすために、抗酸化成分が多く含まれた色鮮やかな食品を摂ることが動脈硬化対策となります。LDLコレステロールを減らす医薬品を使うなら、同時に抗酸化成分も摂ることがすすめられてよいわけです。
不当表示ということでは、以前に「厚生労働省輸入許可」と商品パッケージに表示した例がありました。また、「消費者庁販売許可」とチラシに入れていたものもあります。海外の食品は厚生労働省の許可がなければ輸入できないので、「輸入許可」は間違いではないのかもしれません。健康食品などは消費者庁が販売にストップをかけたら売ることができないわけで、それを売っているということは許可されたのと同じだから、という理屈ですが、これも無理やり感があります。
当たり前のことを表示して惑わせるようなことは、消費者保護の観点から見逃すことはできないはずです。