コロナ禍で発達障害児に起こっていること

新型コロナウイルスの感染拡大によって、「地域住民の安全と健康を守る」ために外出自粛と3密回避が求められ、周囲の方々との交流が断たれるようなことになっています。このことで主に語られているのは高齢者ヘの影響で、自宅で長く過ごすことによる運動不足、過食、特定健診の受診率の低下、医療機関の利用減少などから、住民の生活習慣病や認知症の増加、健康寿命が短くなることまでもが強く懸念されています。高齢者や、高齢者に患者が多い基礎疾患では新型コロナウイルス感染症に感染しやすく、また重症化しやすいことが確認されています。
その一方で、子どもの健康面での影響は語られる機会はあまりなくて、子どもの10人に1人は存在しているとされる発達障害児のことは、まるで忘れ去れているのではないかと思われるくらい、コロナ禍と発達障害への影響が語られることはありません。語られることがないのでは、改善への対応も期待することはできません。しかし、発達障害児に限らず、発達障害がある人もコロナ禍では現在の状態を悪くするような心身への影響を受けています。
発達障害は自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害に大きく分けられていますが、どの状態であっても周囲とのコミュニケーションが苦手です。3密を避けることは感染防止に有効であることはわかっていても、社会的なコミュニケーションを深めようとする行動の妨げになります。3密回避の対象にもなっている1m以上の距離を開けることはソーシャル・ディスタントと一般に呼ばれています。本来の意味では社会的距離であることから、社会的な孤立をイメージさせるということで、WHO(世界保健機関)ではフィジカル・ディスタンス(物理的距離)を使うことを推奨しています。発達障害の人にとっては、まさにソーシャル・ディスタンスと感じるような距離感を生み出す結果となっているということです。
マスクをすることは息苦しさだけでなく、表情が読み取りにくく、それだけでも発達障害の人には不安が増す要因となっています。ワクチンを接種すればマスクをつけなくてよいのかというと、他人から感染はしないとしても、すでに感染していた場合には他人に感染させる可能性があるので引き続きマスクはしなければなりません。子どもはマスクをつけて生活することが困難であるということと、これまでの新型コロナウイルスは子どもへの感染率が低かったことからマスクに重点が置かれてこなかったところがあります。しかし、変異株は子どもへの感染も確認されていて、現状の把握ではあるものの変異株感染の20%ほどが16歳以下と発表されています。
これを受けてワクチン接種の年齢を引き下げようという動きはあるものの、マスクと3密回避は当分(?)は継続されることから、まだまだ発達障害の人の困難さも続くということです。