一生懸命と一所懸命

「一所懸命」と原稿に書いたら、校正の段階で「一生懸命」に直されるのが常です。テレビ番組では、「一所懸命」と発言した人がいたら、テロップには「一生懸命」と表示されます。ネット検索で「一所懸命」と引いたら「一生懸命」の間違いでないかと表示されることもあります。

どちらが正しいのかというと、「両方とも正しい」「どちらも物事を命がけでやる」という回答がほとんどです。元々の言葉は「一所懸命」で、その意味は武士が領主から賜った領地を命がけで守って、これを生きる糧(生活の頼り)にして生きたことに由来しています。

このことから時代を経て「物事を命がけでやる」という意味で使われるようになり、一か所にとどまるのではなくて、一生をかけてやるということで「一生懸命」と書かれるようになりました。

しかし、「両方とも正しい」という解釈があるように、意味合いを込めていれば「一生懸命」も「一所懸命」も使われます。辞書を見ても、「一生懸命」も「一所懸命」も見出し語となっています。

新聞や雑誌などでは、名前を出して書いている寄稿では原稿通りに「一所懸命」を使うことはあるものの、それ以外は「一生懸命」が使われています。

テレビ番組の代表的ともされるNHKでも「一生懸命」を採用しています。NHKの番組で使われる言葉は『NHK編 新用事用語辞典』に従っていますが、これを見ても「一生懸命」が採用されています。

「一生懸命」は、まだ古語の扱いはされていないものの、もう一世代(30年ほど)が過ぎたら、「一所懸命」は間違いとされて、使われていないかもしれません。

ちなみに私は一か所で頑張るという意味で「一所懸命」を使うことが多いのですが、最近も印刷されたものを見たら「一生懸命」に直されていました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕